自動券売機だけの駅ばかりでいいのか

鳥塚氏:お客様を楽しませるためには、まず自分たちが楽しまなければダメですよ。寝台車や食堂車をなくして、車内販売もやめようとした人たちが、最高級の列車を動かすことができますか? という話です。

 大井川鐵道はSLを昭和51年から動かしている会社で、観光、旅行事業も含めて、いろいろな経験を持っているんです。それは大事にしなければいけないと思います。

SLは今や大井川鐵道の「代名詞」となっている(写真提供:大井川鐵道)

——ところで、現代の日本は人口の少ない地方に行くほど、乗客の鉄道離れが進んでいます。鉄道と地域の連携はどうあるべきとお考えでしょうか?

鳥塚氏:いま、大井川本線は川根温泉笹間渡と千頭の間が不通になっていますが、その不通区間の駅で、地元の人たちが草刈りをやったりして駅をきれいにしてくれているんですよ。

 町の経済自体は、林業や建設業に委ねられていますから、鉄道が不通であることへの不満の声はそこまで大きくはないのですが、大井川鐵道を支えたいと考えている人はたくさんいるわけです。

 大切なのは、鉄道事業者がお客様目線を持つことであって、駅を自動券売機だけにしてしまうとか、昔の貨車を1両置いて新しい待合室にしてしまうとか、そういうやり方は、自分たちの都合優先になり過ぎていないか、ということです。

 安易なやり方では、さらにお客様が減ってしまうかもしれない。そこから生まれるのは、サービスの質の低下という悪循環です。

——日本のローカル私鉄はどこも青息吐息で、明るい話題が少ない。鳥塚さんが考える地方私鉄の理想像は、どのようなものなのでしょうか?

鳥塚氏:大井川鐵道の場合、平日は貨物輸送、休日は観光輸送に力を注ぐという形での2本柱を確立させるということですね。

 今は「駅ナカ」事業であるとか、ホテル経営であるとか、鉄道会社の関連事業が脚光を浴びていますけれど、そういうものは、鉄道の利用客がいなくなったら全部ダメになりますよ。それは経営の柱とは考えにくいのです。

 私が千葉のいすみ鉄道にいた時から、ずっと考えていたことがあります。