鉄道にもマーケティングが必要

鳥塚氏:現場の人は、先輩、上司からそう教えられて、それを守り続けています。けれども、そういう考え方が長く続くと、「上から教えられたことだけをやっていればいいんだ」という考え方に陥ってしまう。

 新しいことを何も勉強しようとしないのであれば、企業として社会についていけなくなってしまうのではないでしょうか。大井川鐵道にしても、ちゃんと黒字だった時期があったのですから。

——SLの運転で集客できたからですか?

鳥塚氏:コロナ禍の前には、SLの運転が続けられていて、団体のお客様が大挙してバスでやって来てくれた。(SLの拠点である)新金谷駅前の広い駐車場がバスでいっぱいになっていたわけです。

 それが今、バスの運転手の勤務時間が見直され、昔ほど簡単にはバス旅行が企画できない時代になりました。すると、旅行会社の営業は、鉄道会社ではなく旅行会社をまわるようになり、パンフレットと名刺だけ置いてゆく。けれども、それだけでお客様を呼ぶことができると思いますか?

——マーケティングができていない、と。

鳥塚氏:できていないと思います。お金の動き方も変わってきているんですよ。

 昔は、銀行員が何日かに一度、鉄道の現場をまわっていたのです。運賃収入という「日銭」がありますから、銀行員はそれを回収していくのです。

 ところが、今は駅で切符を売らないでしょ?

——運賃の支払いはほとんどICカードです。

鳥塚氏:そう。台風が来て観光列車が運休になったとしましょう。3~4日続けて運休になると、1000万単位の欠損が生じることになります。すると何カ月か先の入金がなくなり、資金繰りが大変になります。

 ところが、鉄道の現場で働いている人は、そういう動きを気にしようとしない。