「地域の足」「採算」ばかりの議論でいいのか

鳥塚氏:公的な援助を仰ぐのであれば、将来的に事業を継続しなければならない。とすると、崩落した箇所だけではなく、ほかのトンネルや鉄橋についても安全性をチェックし、必要があれば改修工事を実施しなければなりません。

 自己資金ですべて直せるのであれば、問題ないのかもしれませんが、何億円もの費用をどう調達するのか、あるいは公的な援助を仰ぐのであれば、その枠組み作りをどう進めてゆくのか。その検討に時間がかかっているのが現状です。

——今の時代、インフラまで含めて 全部を一私企業で対応するのは無理ですよね。恐らくは、国や自治体が面倒を見なければ何も始まらない。

鳥塚氏:国とか県とか市とかがね。ところが、そうなるとみんなが綱引きを始めちゃうというのが、今の日本の社会です。みんなお金は出したくないから。

 次に、「鉄道は、地域の足になってないでしょ。だって、お客さんが乗っていないのだから」という声が上がってくる。コミュニティバスを運行すればいいのだと。

 けれども、状況をもっと大きな目で見て、静岡県の中でお金を稼げるところはどこなのか、県にとってプラスになる部分、あるいは日本の国にとってプラスになる部分は何なのか? こういう問題をきちんと考えていかないとダメなんじゃないですか?

 地域の足だとか、採算ベースだとか、そういう話ばかりではなくて。

——皆でマクロ的な視野を持とうということですね。ところで、実際に静岡に赴任されて、想像と違っていたことって、ありますか?

鳥塚氏:大井川鐵道は、長い歴史のある会社です。それだけに自己流のところも多いなとは感じましたね。

 ではなぜ、自己流なのか?