指紋に尿まで採られたアプリコ従業員

 そのアプリコの従業員たちは、野崎氏の死亡が確認された2日後、おのおの警察に呼ばれて事情聴取を受けた。指紋はもちろん、口腔内の粘膜も採られ、尿検査までさせられたという。

 従業員の中で、警察からもっとも多く事情を聴かれたのが、番頭でアプリコの監査役にもなっているマコやんだった。

 ここまでマコやんのことを「番頭」と書いてきたが、もちろんアプリコに番頭という役職があるわけではない。そもそも部長や係長といった役職もない。従業員全員が同じ立場である。それは役職に就けるとその人の給料を上げなければならないことを野崎氏が嫌っていたからだという。

 ただ、誰もが野崎氏の信頼が厚いマコやんのことを「番頭さん」と親しみを込めて呼んでいた。実質的なナンバー2だったのである。

 マコやんの性格は明るく朗らかなので、社長の野崎氏も重宝していた。仕事でどこかに出かけるときにはマコやんにドライバー役を頼んだ。60歳に近い年長者ということもあり、野崎氏の食事に付き合わされることもしばしばあった。

 そうした流れで、結婚した後の早貴被告の世話も、お手伝いの大下さん(仮名)とともに頼まれていた。要するに、長年、野崎氏の最も側で仕え、さらに早貴被告の普段の姿もよく知る人物ということになる。