「視線を合わせた後で早貴がチラチラとワシを見ていたのに気が付いたんや。公判の最中に何度も何度も視線を送ってきたんやが、その表情がなんとも哀れに見えてのぉ」

――助けて、というような表情?

「そうや。社長が亡くなった後にワシや吉田さんが早貴に対して『やったのなら自首したほうがいい』と言っていたことを思い出していたんやないのかな。あのとき罪を認めていればこんなたいそうな裁判にもならんかったのに。逮捕されて3年間も接見禁止だから面会したくてもできなくてなぁ。詐欺罪でも有罪の判決が出ているし、嘘つきの根っからの悪女だと思っていたけど、あの早貴の懇願するような表情はあまりにも哀れでなぁ。ちょっとグッときたで」

経理担当社員の辛辣な証言

 マコやんが証人として呼ばれた4日前の10月11日には、証人としてアプリコで経理を担当していた佐山さん(仮名)が呼ばれていた。背が高くスレンダーな長い髪のアラフォーだ。

亡くなったイブの棺の前に立つアプリコの経理担当社員・佐山さん(仮名)と野崎幸助氏(撮影:吉田 隆)
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 佐山さんは物事をハッキリという性格だ。そんな何事にも正論で詰めてくる佐山さんを野崎氏は苦手にしていた。そのため彼女が出社してくる午前10時には会社の事務仕事を終え、佐山さんと顔を合わせないようさっさと自宅に帰ってしまうほどだった。

 仕事はしっかりとするので、その点では野崎氏に不満はなかったのだろう。

 佐山さんは、野崎氏の早貴被告に対する扱いに批判的だった。しばしばこう漏らしていたという。

「なんであんなのに月100万円も払うの? 信じられない」

“あんなの”とは早貴被告のことだ。野崎氏は結婚した早貴被告に、毎月の“お手当”として100万円を振り込んでいたが、その振込作業を担当させられたのが佐山さんだった。