衆院選の投票率はどうなるだろうか(写真:長田洋平/アフロ)
  • 衆院選が近づいている。前回の投票率は55.93%で、年代別では20代が36.5%であるのに対し50代が62.96%、60 代が71.38%と、「若者の政治離れ」が顕著なように見える。
  • ただ、政治意識や世論調査研究の第一人者である埼玉大学の松本正生名誉教授は「中高年の政治離れの方が深刻」と分析する。
  • 国政選挙・地方選挙ともに中高年の投票率が年々減少しており、背景には小選挙区比例代表並立制の影響や中高年の「若者化」があるという。

(湯浅大輝:フリージャーナリスト)

50代で進む「政治離れ」

──松本さんは以前から、「若者の政治離れ」よりも「中高年の政治離れ」の方が深刻だと主張されてきました。どういうことでしょうか。

松本正生・埼玉大学名誉教授(以下、敬称略):まず前提として、中高年の方が若者より投票率が高い状況は続いています。ただ、私が注目しているのは、全体の投票率が上がったときには、その上昇幅は中高年の方が小さく、逆に投票率が下がったときは、下落幅が中高年の方が大きくなっていることです。つまり、国政選挙・地方選挙ともに「中高年の方が若者より、政治への関心度の低下が大きい」ように見えることです。

松本 正生(まつもと・まさお) 埼玉大学名誉教授 1955年、長野県生まれ。中央大学法学部卒。法政大学大学院博士後期課程修了(政治学博士)。専門社会調査士。埼玉大学経済学部助教授、同教授などを経て、2010年埼玉大学社会調査研究センターを創設し、センター長に就任。同センターでは、研究機関誌『政策と調査』を年2回刊行するとともに、世論・選挙調査研究大会を毎年開催した。2020年4月には、埼玉大学発のベンチャー企業として(株)社会調査研究センターを設立し代表取締役社長に就任。2021年4月から埼玉大学名誉教授。

 まず、直近のさいたま市における、国政選挙の年齢別投票率を見てください。2022年の参院選の投票率は全年代で52.39%、2019年は48.11%だったので4.28ポイント上昇しました。

 注目すべきはその上昇幅が若者の方が大きいことです。22年の20代の投票率は37.53%でしたが、19年から6.44ポイント上がっています。他方、50代の上昇幅は3.38ポイント、60代は1.74ポイントとなっています。若者はそもそも投票率が低かったので、全体の関心が高まれば上昇幅が大きくなる可能性も否めませんが、気になる現象です。

松本氏作成、政治意識の変貌―「そのつど支持」から「選挙ばなれ」へ─より
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 市議選や県知事選などの地方選挙においては、「中高年の政治離れ」の傾向がより顕著です。下の表を見てください。07年と11年のさいたま市議選・埼玉県知事選を比較すると、中高年の投票率の方が、20〜30代の投票率よりも減少幅が大きいことがわかります。19年と23年の埼玉県知事選でも同様の傾向が見られるのです。 

松本氏作成、政治意識の変貌―「そのつど支持」から「選挙ばなれ」へ─より
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──中高年の投票率が下がっているのはなぜでしょうか。