今年のノーベル分が鵜賞を受賞した韓国の韓江さん=2016年撮影(写真:AP/アフロ)
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 2000年の故・金大中大統領のノーベル平和賞受賞に続き、24年ぶりに韓国人ノーベル賞受賞者が誕生した。2016年にブッカー国際賞を受賞して世界に名を馳せた作家の韓江(ハン・ガン)さんが、アジア人女性として初めてノーベル文学賞受賞者になった。K-POPや韓流ドラマ、韓国映画などが世界的な人気を集め「文化強国」としての自負心が強い韓国社会は、今回の受賞でまさに「韓国文学の時代が到来した」という興奮を隠せずにいる。

予想もされていなかった受賞

 1970年、全羅南道光州(現在の光州広域市)に生まれた韓江さんは延世大学国文科を卒業した後、93年に詩『氷の花』を発表して登壇し、翌年『ソウル新聞』の新春文芸で短編小説『赤いアンカー』が当選し、小説家として世の中にその名を知らしめた。2005年には小説『蒙古斑』により韓国で最も権威ある文学賞・李箱文学賞をはじめ韓国の有名文学賞を総なめに。さらに16年に『菜食主義者』でブッカー国際賞を受賞し、一気に世界的な作家となった。

 ただ、今回のノーベル文学賞受賞はまさに「サプライズ」だった。

 韓国で初めてノーベル賞が期待された作家は詩人の高銀(コ・ウン)氏だった。コ・ウン氏がノーベル文学賞候補として議論された時代には、毎年、ノーベル文学賞受賞者が発表される10月の第2木曜日になると、コ・ウン氏宅前に記者たちが陣取るのが風物詩になっていた。だが、2018年にコ・ウン氏が後輩作家に性暴力を振るったとの疑惑が浮上すると受賞への期待も消失し、韓国でノーベル文学賞に対する関心は急激に弱まった。

 今年も例外ではなかった。韓国メディアは中国の残雪(ツァンシュエ)や日本の村上春樹などの可能性を報じ、中には「受賞した作家が他の作家より優秀だという意味ではないだけに、受賞と関係なく韓国文学は日々進歩している」(『文化日報』「ツァンシュエから春樹、スティーヴン・キングまでノーベル文学賞の行方は?」)と、はじめからあきらめムードの記事もあった。

 ところがふたを開けてみれば韓江さんのノーベル文学賞受賞である。