固定資産税の負担増、防犯・防災面の不安がデメリット

 では、デメリットはどんな点が挙げられるのだろうか。前述したように、建築費が2階建ての半分で済むわけではなく、坪単価を計算するとむしろ2階建てよりも高くつくという見方もできる。それが第一のデメリットかもしれない。

 コスト面では、固定資産税の負担が重くなる点も覚悟しておく必要がある。

 建築基準法では、敷地面積に対して建物が建てられる面積を示す「建ぺい率」、建てられる建物の延床面積の割合を示す「容積率」が定められている。住宅地などに多い建ぺい率50%、容積率100%の地域で、総2階の延床面積100m2の戸建て住宅を建てるためには、100m2の敷地があればOKだが、1階建てで延床面積100m2を確保するためには、敷地面積は200m2必要になる。

 その分、土地に関する固定資産税の負担が重くなる。郊外の住宅地で、固定資産税の評価額が1m2当たり20万円の場所だと、100m2の土地であれば、年間の税額は「20万円×100(m2)×1/6(軽減措置)×1.4%(税率)」の4万6666円で済むが、200m2の土地だと9万3333円になってしまう。

 固定資産税の支払いは毎年のことであり、高齢化して年金生活になったときの負担は気になるところだ。

 平屋だとどうしても延床面積が小さくなるので、ゆとりある住まいにするためには一定の広さが必要だ。それがないと収納スペースなどが不足して、家具や荷物が散乱し、圧迫感が生じる可能性がある。

 それだけに、平屋住宅を建てるときには、どの程度の収納があれば生活しやすいかを考えておき、収納スペースを確保すると同時に、場合によっては断捨離によって、持ち込む荷物を整理しておいた方がいいかもしれない。日常的に使用するものではないのに、思い出などが詰まっていて捨てがたいものについては、トランクルームなどを活用する手もあるだろう。

 さらに、プライバシー、防犯面での不安もある。1階建てなので、外部から覗かれやすく、プライバシーを守りにくい。また、外部から侵入されやすいので、十分な防犯対策が欠かせない。防犯システムや、頑丈な玄関ドア、防犯ガラスなどを採用するといった対策を取っておくのがいいだろう。

 防犯上の観点から外回りをコンクリートで固めてしまうと、無味乾燥な住まいになり、せっかく平屋を建てるかいがなくなってしまう。適度に植栽を設けて、庭に自然素材を設置するなどの工夫を行いたいところだ。

 また、近年では台風による大雨やゲリラ豪雨などが増えている。平屋では浸水時に2階、3階に垂直避難できないため、早めに避難所などに駆け込まなければならない。床上浸水すると、水が引いてからもしばらくは生活できない状態が続くだろう。こうした点もデメリットのひとつと言える。

 実際に、平屋住宅を建てるに当たっては、最近はモデルハウスを見学できるようになっている。総合住宅展示場でも平屋を展示するケースがあるし、先に触れたように、分譲住宅でも平屋が増えているので、それらを見学すればいい。

 これまで、平屋での生活を経験したことがない人も多いだろうから、足を使って、自分の目で確認しておくのが安心だ。その上で、メリット・デメリットを十分に理解してからマイホーム選びをすれば、失敗も少なくなるのではないだろうか。

【山下和之(やました・かずゆき)】
住宅ジャーナリスト。住宅・不動産分野で新聞・雑誌・単行本などの取材、原稿制作、各種講演、メディア出演などを行う。『住宅ローン相談ハンドブック』(近代セールス社)、『はじめてのマンション購入絶対成功させる完全ガイド2022─2023』(講談社ムック)などの著書がある。