中堅ビルダーや大手ハウスメーカーも「主力商品」のひとつに

 後述するが、平屋を建てるためには、2階建て、3階建てなどに比べると広い敷地が必要になる。特に地価の高い三大都市圏、中でも首都圏の東京都で敷地を確保するのは簡単ではないので、新たに土地を求めて平屋を建てるのは容易ではない。

 それでも年収1000万円、2000万円を超える高額所得者、億単位の資産を有する富裕層などを中心に、平屋を建てる人がじわじわと増えているという。

【グラフ3】にあるように、世帯人員の減少は大都市部ほど深刻で、東京都の場合、2015年段階で1.99人と2人を切っており、2040年には1.88人まで減少する見込みだ。2階、3階はいらない、平屋で十分と考える人が増えるのも自然な流れと言える。


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 そうしたニーズに加え、すでに土地を所有している人が、広い住まいは必要ないので、平屋に建て替えるというケースも増えている。

 中には、平屋に建て替えるのではなく、既存の建物を生かして、2階建て、3階建ての2階、3階部分を削って1階建てに“減築”する人も登場している。新たに建て替えるより予算が少なくて済み、工事期間も短く、長年住み慣れた愛着のある住まいに住み続けられるというメリットもある。

 そうしたさまざまな事情もあり、大手住宅メーカーもホームページなどに平屋住宅のコーナーを増やし、積極的な宣伝活動を展開するようになっている。

 住宅展示場においても、3階建て、4階建てなどが増える一方で、平屋を展示するメーカーも増えている。

 これまでは、平屋住宅といえば、町場の工務店の独壇場と考えられていたが、中堅ビルダーや大手ハウスメーカーでも主力商品のひとつとして考えるようになってきたわけだ。前述したように、持家の新設住宅着工戸数の減少が止まらない状況下だけに、受注を確保するための切り札として期待しているのかもしれない。