旅の主目的が観光から食へと変化

 かつて、旅行・観光といえば、絶景やスポーツ、神社仏閣に代表されるその土地の風土を楽しむために出かけるものだった。

 食については、せっかく地方に出かけたのだから、ついでにその土地の美味しいものも味わおうというものだった。

 ところが、いまや主従は逆転。

 地方の美味しいレストランに行きたいがために旅行を計画し、せっかく行くのだから、その地方の風土も楽しもうという旅行者が増えているのである。

 前述の「クローズアップ現代」に登場したジョスリンさんはすでに日本に100回以上来ており、「私たちは食のために旅をします。食事は私たちの旅の一部ではなく、目的です」と述べていた。

 そうした、わざわざ訪れる価値のあるレストランを、最近は「デスティネーションレストラン」と呼ばれる。

 東京は世界一ミシュランの星付きレストランの数が多い都市と言われているが、美食の国・日本の名店は実は地方に数多く存在している。

 だからこそ、旅行者は冒頭に紹介したレヴォのように、地方を目指しているのだ。

 日本を代表する英字紙「ジャパンタイムズ」が2021年から表彰する「Destination Restaurants」アワードがある。

 選考対象となるのは「東京23区と政令市を除く」場所にある、あらゆるジャンルのレストランであり、日本の風土の実像は都市よりも地方にあることと捉え、あえてエリアを地方に限定し、毎年10店を表彰している。

 レヴォは開催初年度の「The Destination Restaurant of the year」に選ばれているが、これまで総計40店がリストされ、北海道から沖縄まで多岐にわたる。

 世界中のレストランを訪れ、世界一のフーディー(食いしん坊)と呼ばれる浜田岳文氏は、著書『美食の教養』の中で、日本が美食の国として世界有数とした上で、その理由について、地域的多様性と豊富な食材を挙げている。

 島国で海岸線が長いため魚介類が豊富なことや、南北に長く、気候や生態系が異なるため、多様な食材が揃うこと、ジビエが充実しているからだというのである。