セブン-イレブン・ジャパンの業績が失速している要因

 そんな中、扇の要としてこれまでグループの業績をけん引してきたコンビニ事業が、日本のセブン-イレブン・ジャパン(以下SEJ)、北米のセブン-イレブン・インク共に失速状況にある。

 収益の落ち込み幅はセブン-イレブン・インクの方がより大きいのだが、同業他社との比較もあり、話はSEJに絞ることとする。2025年2月期の中間決算で、SEJの営業収益(売上高に相当するフランチャイズ加盟店からのロイヤルティ収入。チェーン全店売上高は別)は4623億円で前年同期比96.9%、営業利益は1277億円で同91.9%という結果だった。

 2位のファミリーマート(以下FM)は順に2575億円、517億円、3位のローソンが2054億円、319億円で、FMとローソンが共に増益で着地したのと比べ、SEJだけが減益だ。

 1店舗当たりの平均日販はSEJが70万円弱、FMとローソンが50万円台後半で、営業利益の額ともども、SEJとの差はまだ大きい。ただ、FMとローソンは以前の平均日販50万円台前半という水準からは上げてきており、プライベートブランド(PB)商品で価格据え置き増量キャンペーンを打った効果なども相まって、ジワジワと追い上げ傾向にある。

ローソンやファミリーマートにじわじわと追い上げられるセブン-イレブンローソンやファミリーマートにじわじわと追い上げられるセブン-イレブン(写真:共同通信社)

 SEJの失速原因は、「インフレ下、特に若年層がセブン-イレブンの商品は価格が高いと敬遠して客数減になったことが一番大きい」(永松文彦・SEJ社長)として、下期に入った9月以降は「うれしい値!」と銘打った、手ごろな価格帯の商品を270品目まで拡大。「週次、月次の売り上げ数字のモニタリングから課題を洗い出し、われわれセブン&アイHDとしても同じKPI(重要業績評価指標)を持って伴走したい」(井阪氏)と危機感を募らせている。

 消費者から価格が高いと思われてきた点については、筆者も以前セブン-イレブンで買い物をした際、従来価格に比べた値上げ幅の大きさに驚いた商品があった。また、価格面以外でも、弁当の上げ底をはじめとした商品容器や包装について不満を漏らす消費者は少なくない。

 そんな中で、一度離れた消費者を呼び戻していくのはそう簡単なことではなく、前出の永松氏は「うれしい値!」について「価格が高いというイメージを払拭して変えていくためにも半年ぐらいは続けていく」としている。

 井阪氏も「業績が悪いのはお客さまの期待に応えられておらず、変化対応力が弱くなっているから。40年ぶりと言われるインフレはいわば所与の条件であり、その状況下でも伸びている流通業はあるのだから、変化対応のレスポンス、スピードを上げていくことに尽きる」と悔しさをにじませていた。