多様な流通業態を抱えるセブン&アイ・ホールディングス(HD)が、コンビニ専業企業に集約されることとなった。海外の投資ファンドや同業者からの株主提案、買収提案に促されてのグループ大再編というイメージが強いが、今回の再編スキームが果たして「最終形」になるのだろうか──。
「スーパーとコンビニは同じ屋根の下での成長は難しい」
「ようやくコングロマリット・ディスカウント(グループ全体の価値が個々の企業の価値より低くなること)のくびきから解放され、主軸の事業で勝負できる──」
井阪隆一・セブン&アイHD社長の心境はこんなところだろうか。実際、同社の中間決算説明会の際、同氏はこう語っていた。
「(直営の)スーパーと(フランチャイズの)コンビニとでは成長ストーリーが違うので、(セブン&アイHDという)同じ屋根の下での成長は難しい」
その社内議論の結果が、今回新設した中間持ち株会社のヨーク・ホールディングス傘下に、イトーヨーカ堂、ヨークベニマル、セブン&アイ・フードシステムズ、ロフト、赤ちゃん本舗など連結子会社24社と、持ち分法適用会社7社の計31社を移管することだった。
ヨークHD会長にはセブン&アイHD代表取締役副社長で創業家出身の伊藤順朗氏、社長にはセブン&アイHD常務執行役員でスーパーストア事業統括(以前はグループ商品戦略本部長)の石橋誠一郎氏が就いた。現場実務の経験が豊富な石橋氏が社長を担い、創業家の伊藤氏が会長としてにらみを利かすという点では、伊藤氏がCEO、石橋氏がCOOといった位置付けなのだろう。
一方、コンビニ以外のグループ会社を一気にヨークHDに切り出したことで、セブン&アイHDは来年(2025年)5月の株主総会を経て、セブン-イレブン・コーポレーション(仮)に社名を変更し、名実共にコンビニ専業企業となるわけだが、現在、セブン&アイHDの2位株主となっている伊藤興業(持ち株8%の創業家の資産管理会社)がそのまま出資を継続するのか、どこかの段階で売却するのかも焦点になりそうだ。
井阪氏は、グループの祖業であるイトーヨーカ堂を興した伊藤雅俊氏(2023年3月に他界)が存命の間は伊藤氏への配慮を優先し、特にヨーカ堂については店舗閉鎖などのリストラにとどめ、ドラスティックな再編までは踏み込まないように見えた。
だが、前後して米国投資ファンドのバリューアクト・キャピタル・マネジメントからコンビニ事業の分離、独立を促す株主提案があり、直近ではカナダの同業大手、アリマンタシォン・クシュタールから買収提案を受けるなど、海外勢から大きく揺さぶられて今回のグループ再編に至っている。