空前の猫ブームと言われて随分と経つが、まだまだ衰え知らずの猫人気。コロナ禍、猫を飼う人が急増。飼えない人はこれまで動画で我慢した分、火がつき、コロナ明けの今、“猫分補給”しようと猫スポットに実際、訪れる人も多いのではないだろうか。

 台湾旅行の際、猫好きの聖地と言われている「猴硐猫村」に立ち寄ったことがある。猫がたくさんいて、地域全体が大きな猫カフェといった感じ。周りの皆さんはどこから持ってきたのか、手に手に“ちゅ~る”を持ち、せっせと猫に餌をやっていた。

 猫グッズもたくさん、売られており、観光地として成り立っているようだった。猫の推し活すら、良くも悪くも街を大きく変える。SNSが普及している現代、猫がいれば、どこでも映えスポットになる。特に今、日本は過去最高のインバウンド市場。猫島に観光客が押し寄せ、島民の生活が脅かされることだってあるのだ。

事前リサーチなし、台本なし、打ち合わせも原則なしの「観察映画」

©2024 Laboratory X, Inc
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『五香宮の猫』は瀬戸内の港町・牛窓で古くから地元の人々に親しまれてきた神社、五香宮に住み着いた野良猫たちに焦点を当てたドキュメンタリー。監督は想田和弘。「ドキュメンタリーに大事件や大惨事やメッセージ性は必要なく、自分に見えた世界をありのままに描写できればそれでよし」と言う監督は自らの作品を「観察映画」と銘打ち、基本的に監督・製作・撮影・録音・編集を一人で行う。原則として、ナレーション・説明テロップ・音楽を使わず、リサーチ・打ち合わせ・台本もない。

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『五香宮の猫』は川崎市議会の補欠選挙に自由民主党公認で出馬する監督の大学の同級生、山内和彦に密着したデビュー作『選挙』から数えて、ちょうど10作目の「観察映画」に当たる。