期待が高まる井上尚弥選手とのビッグマッチ

 14日はセミファイナルで、キックボクシングなどの格闘技で47戦全勝の成績を残して「神童」と称された那須川天心選手が、初のタイトル戦となるWBOアジアパシフィック・バンタム級王座決定戦に判定勝ちした。タイトルマッチの格からすれば、中谷選手の世界戦のほうが遙かに上になるが、サンケイスポーツとスポーツ報知はカラーの終面1ページで那須川選手を取り上げたのに対し、中谷選手は中のページに収容されていた。

中谷選手の2度目の防衛成功を報じるスポーツ紙(写真:筆者撮影)

 日刊スポーツ、デイリースポーツも那須川選手の扱いのほうが大きかった。スポーツニッポンは見開きでほぼ同等に扱い、那須川選手よりも大きく取り上げたのは東京中日スポーツのみだった。東京スポーツは、元WBA世界ライトフライ級王者の具志堅用高氏が自身のユーチューブチャンネルで「少しスター性というかね。引き付けるものがちょっと足りないかな」と指摘したことを紹介する。

 こうした声がある一方、自らの拳で注目度も高めようとする中谷選手は試合後の会見で、「(世間の)注目が大きくなればなるほど、期待も大きくなってくる。期待を上回るというのが僕の仕事。みなさんに何か感じてもらえるコンテンツだと思っている。楽しみに待ってもらえる人が増えれば、パワーになるのでありがたいです」と冷静に答えた。

初のタイトル戦で判定勝ちした那須川天心選手。知名度は中谷選手より上?(写真:共同通信社)

 時代は、中谷選手に追い風だろう。バンタム級はかつてないほど国内人気が高まっており、中谷選手がベルトを持つ以上は、今後も統一戦を含めて日本人対決が予想され、自ずと注目が集まるだろう。中谷選手は、権威がある米老舗専門誌「ザ・リング」の全階級を通じた最強ランキング「パウンド・フォー・パウンド(PFP)で9位に入る。絶対的な強さを追い求め、日本人としては井上選手(現在は2位)に続き、1位獲得を狙っている。

 中谷選手の強さは本場も認める。7月には、井上選手と同様に、数多くのビッグマッチを手がける米興行大手トップランク社と契約。日刊スポーツによれば、今秋には2023年5月以来の米国マッチのプランも浮上していたという。

 さらに、ファンが夢を膨らませるのが、その井上選手との対戦だ。

 同社のボブ・アラムCEOは来日した8月、「うまくこのままいけば、来年、井上対中谷が日本で最も歴史的な試合になるだろう」と語った。アラム氏は米メディアの取材に対しても、25年の米ラスベガス興行には井上とともに中谷選手を参戦させ、同年後半には、井上選手との対戦を東京ドームで実現させたい意向も語ったとする報道もある。