ふた桁の足し算と引き算ができるようになった次男

 3年生になった時、初めて女性の先生が担任になった。2年生と4年生の娘がいる先生だった。新学期早々電話がかかってきて、放課後に週3回、ハングルの読み方を完全にマスターすることを目標に、補習をしてくれるとのことだった。本人も腹をくくって、1年間頑張ると先生と約束したというのだ。

 ハングルはその文字自体に意味はなく、ただの表音文字である。日本人の感覚でいうとローマ字のようなものである。しかし、子音と母音の他にパッチムという仕組みがあって、大人が覚える分には単純なので支障はないが、子供が習得するには難しいと正直思う。

 ハングルのその仕組み自体が次男には難しかった。だから筆者が次男に文字を教える時は、単語をまるまる絵として覚えさせていた。しかしそれでは当然限界がくる。

 先生は、夏休みも冬休みも学校に出てきてくれた。次男も先生のことを気に入ったようで、毎日努力した。

 それが終わってからも、福祉館では週に1回、レベルにあった演習をしてくれていた。1年間の学習が終わった後に、保護者アンケートを見ると、そこには「境界知能程度の児童のための特別授業」と書かれていた。境界知能とは、IQが70から84で知的障害の診断が出ていない人の通称として使われている言葉である。

 これを見て筆者はしっくり来た。詳細なこと、専門的なことは筆者にはわからない。しかしこの程度を基準と考えて、この先も次男の教育を考えようと思った。

 この1年間、次男の学習は先生たちにお任せして、ほとんど介入しなかった。時々出る宿題をしたかどうか、チェックしただけである。それが功を奏したのかはわからないが、次男は楽しく幸せに1年間を過ごし、見事に文字が読めるようになり、その後も自分のペースで前進している。

 4年生になった今年も、担任の先生が放課後週に2回、補習授業をマンツーマンでしてくれている。今年の目標は、簡単な絵本を1人で読めるようになることと、九九段を覚えることである。

 3年生になった時は、両手の指の数を超えた足し算引き算はできなかったが、今では繰り上がり繰り下がりを含めた、2桁の足し算と引き算ができるようになった。九九段はただの丸暗記ではあるが7の段まで来た。

 次男の奮闘はまだまだ続く。

次男が解いた九九のドリル次男が解いた九九のドリル

立花 志音(たちばなしおん)
1977年生まれ 東洋英和女学院大学短期大学部キリスト教思想科卒業後、損保勤務を経てソウルに留学。2005年韓国で出会いの夫と結婚。現在2男1女を育てながら日本人が見る韓国をライターとして韓国内で活動中。