グーグル、ノーベル賞を席巻

 アルファフォールドはAI技術を売り物にする企業「ディープマインド」の(無料の)製品です。今回受賞のハサビス博士とジャンパー博士はディープマインドの所属で、ハサビス博士はディープマインドの創立者の一人でもあります。ディープマインドはまた、碁をプレイするプログラム「アルファ碁」の開発でも知られています。アルファ碁もまた機械学習を応用したAIで、その強さは人間を圧倒します。

 ディープマインドは現在グーグルの傘下にあるので、ハサビス博士とジャンパー博士の受賞はグーグル関係者の受賞といえます。

 実は2024年のノーベル賞受賞者の中には、他にもグーグル関係者がいます。物理学賞は、機械学習技術の基礎原理を発見・発明した功績で、米国プリンストン大のジョン・ホップフィールド教授(1933-)とカナダ・トロント大のジェフリー・ヒントン名誉教授(1947-)が2分の1ずつ受賞しました。ヒントン名誉教授は「AIの父」と呼ばれ(る人々の一人で)、かつてグーグルに所属していました。ただし現在は辞めていて、最近はAIが社会に悪影響をおよぼす可能性を指摘しています。

 大学や国立の研究機関ではなく、企業の研究者がノーベル賞をもらうことは珍しいことではありません。日本でも島津製作所の田中耕一氏が2002年にノーベル化学賞を受賞しています。しかしこれまでの受賞企業はほとんどが、島津製作所やIBM、ベル研究所など、ハードウェア(機械装置)を製造・販売するメーカーでした。それが今年は、ソフトウェアを開発する企業がいきなり3人も受賞者を出したのです。

 これは極めて示唆的で象徴的なできごとです。