“開かずの踏切”だから事故が多いのか?

 一口に踏切と言っても、大別して第一種から第四種まで4種類ある。ただし、歴史的な経緯から第二種はすでに存在しない。

 第一種は警報器と遮断機の2つを備えた踏切のことで、一般的に踏切をイメージする場合は第一種を前提にしていることが多い。

 第三種は警報器があり、遮断機がない踏切。第四種は警報器も遮断機もない踏切。警報器も遮断機もない第四種と勝手踏切との違いは、「×」をかたどった踏切警標の有無だ。踏切警標が設置されていれば、行政は正式な踏切として認識していることになる。

 これまで政府や地方自治体は痛ましい事故をなくす施策として、危険な踏切の除去に取り組んできた。踏切事故が起こると、必ず“開かずの踏切”の問題と絡めて論じられる。「自動車・歩行者から見て踏切道が遮断されている時間がピーク時において1時間あたり40分以上」と国交省が定義している踏切のことだ。

 あちこちに鉄道が走っている東京・大阪といった大都市部では、誰もが一度は開かずの踏切に遭遇してイライラしたことがあるだろう。そんな経験も手伝って、事故が起こるとやり玉に挙がりやすいが、開かずの踏切だからといって事故が起きやすいとは限らない。

 例えば、横須賀線逗子駅から約300m東側にあった踏切は歩行者専用で、地元住民ぐらいしか使っていなかった。JR横須賀線と貨物、留置線の9線をまたぐ全長約35.5mにも及ぶこの踏切は警報機や遮断機は設置されておらず、悪天候時や夜間時に渡るのはかなり危険だった。

 それでも地元から存続の要望があり、長らく廃止されずに残っていた。はた目からは危険な踏切と解釈されても、地域住民にとって生活動線として機能している。それらを廃止することで不要な遠回りを強いられ、不便が生じたり地域が分断されたりといった事態が起きかねないため、むしろ地域住民は踏切廃止に消極的だった。

 だが、同踏切は開かずの踏切ではないものの、過去に死亡事故が起きているという理由から2021年8月に廃止された。

 踏切事故は人や車の通行量が関係するほか、地形などの視認性も大きな要因になる。そのため、地方自治体は鉄道各社と連携して対策を講じてきた。

逗子駅から約300m東側にあった第四種踏切。事故が起きていることを理由に。2021年8月に廃止された逗子駅から約300m東側にあった第四種踏切。事故が起きていることを理由に。2021年8月に廃止された(2021年7月、筆者撮影)