終戦後、土偶の美が認められる

「ハニワと土偶の近代」展示風景 岡本太郎《顔》1952年 川崎市岡本太郎美術館

 現在では日本の文化と美の源流として認識されている土偶は、戦後になって初めてその価値が見出された。その担い手を務めたのが、美術家・岡本太郎だ。彼は考古学上の資料としか見られていなかった縄文土器や土偶の美術的価値を認め、1952年に『みずゑ』誌上に論文「四次元との対話――縄文土器論」を発表した。

 論文は各方面に大きな衝撃を与え、建築やデザイン界を中心に縄文ブームが巻き起こった。同時に「縄文」と「弥生」のどちらが伝統的かをめぐって論争が勃発。結果として、日本美術史は書き換えられ、縄文時代の遺物が教科書や美術書の巻頭を飾るようになった。本展では岡本太郎《犬の植木鉢》(1954年)が展示されている。太郎は縄文の“発見者”であるが、この作品は縄文的というよりもハニワ風なのが微笑ましい。

「ハニワと土偶の近代」展示風景

 その後、ハニワと土偶のイメージは大衆のカルチャーとして定着していく。60年代以降はSF・オカルトブームとも結びつき、古代の遺物に着想を得た特撮ヒーローが生み出されていく。1966(昭和41)年に制作された映画『大魔神』。魔神のデザインは国宝のハニワ《挂甲の武人》がモデルだという。会場にはハニワ・土偶とサブカルの関連性を紹介する「ハニワと土偶とサブカルチャー年表」が掲示されており、マンガ、アニメ、ビデオゲームなどのジャンルにも大きな影響を与えていることがわかる。

 子供の頃から学校の授業で教えられ、身近な存在であると感じていたハニワと土偶。だが、現代人と一昔前の人たちとの見方、向き合い方は大きく違う。ハニワ、土偶の知らなかった物語に触れ、新たな視点を得られる展覧会だ。

 

「ハニワと土偶の近代」
会期:開催中~2024年12月22日(日)※会期中一部展示替えあり
会場:東京国立近代美術館 1F企画展ギャラリー
開館時間:10:00~17:00(金曜日、土曜日は10:00〜20:00) ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日、10月15日(火)、11月5日(火) ※ただし10月14日、11月4日は開館
お問い合わせ:ハローダイヤル 050-5541-8600

https://haniwadogu-kindai.jp/