日本のハニワから、世界のハニワへ

「ハニワと土偶の近代」展示風景 原弘《現代の眼:日本美術史から》1954年 国立工芸館

 戦中のナショナリズムから戦後へのインターナショナリズムへと時代が変わるとともに、古代遺物の描かれ方も大きく変貌。戦中の「ハニワの美」ではなく、世界を意識した「現代の眼」で描かれるようになる。

 本展で展示されている猪熊弦一郎《猫と住む人》(1952年)は、たくさんの猫がハニワとじゃれ合い、楽しそうに過ごす様子が描かれている。猪熊はハニワの美について、こう述べている。「シンプルなものの美であり、何処の国の者にも解し得る埴輪こそ、我々が望んで居る近代最高の美だ」。

「ハニワと土偶の近代」展示風景 猪熊弦一郎《猫と住む人》1952年 丸亀市猪熊弦一郎現代美術館 ©公益財団法人ミモカ美術振興財団

 木版画家の斎藤清は国立博物館蔵のハニワ「胡座の男子」「帽子を被る男子」をモチーフに、ハニワの形状を単純化し、入れ墨部分に色を挿したキュビスム風の作品《ハニワ》を制作した。「上野の博物館がモダンになってきて、抽象の作品が目立つようになってきた。具象絵画をやっているのは、ばかにされる風潮だった。これではだめだと思って“ハニワ”をはじめたんだ。国宝級の埴輪を手でもたせてスケッチさせてくれた」。こうして完成した作品は、第2回サンパウロ・ビエンナーレに出品された。