駿河湾のタカアシガニを増やす

 戸田で30年間タカアシガニ料理を作ってきた丸吉食堂(キチの「士」は下の横棒が長い「土」)の中島寿之さんは言う。

「タカアシガニのデータを取って、それを漁に活かすべき」

 学生時代、水産学部で魚の生態系を研究してきた中島さん。これまでタカアシガニをただ漁師から仕入れるのではなく、駿河湾のどの漁場で獲れたものなのか、同じ漁場で何匹獲れたのかなど、漁師にヒアリングをしてきた。

 そして自分が実際に調理をするときにカニ味噌の様子、身の締まり方、卵の有無などをチェックし、漁師からの情報と目の前のカニの関連性を検証してきた。

 その結果「○月なら○○付近で獲ったものが身が締まっている」「このカニの近くにはおそらく100匹くらいの群れがいるだろう」など自分なりの分析結果を漁師にフィードバックしている。

 一方、漁師にとっても情報収集は漁の生産性を上げるために有益だ。

 漁師になって27年、「自分でも漁の結果を全てノートにとっている」と言う水八丸の船長、水口敬三さん。40代後半の地元で期待がかかる若手だ。

トロール船・水八丸船長の水口敬三さん(右)、丸吉食堂の中島寿之さん(左)

 水口さんが提案するのは駿河湾のタカアシガニを少しでも増やす試みだ。

 戸田では22年前から毎年1回、地元商工会が主催となって、資源保護と調査を目的にタカアシガニの放流を行っている。