もはや引けない状態に追い込まれ復権を図る「伊周の末路」

 第35回「中宮の涙」(2024年9月15日放送分)では、伊周は道長を暗殺しようとするが、弟の隆家に邪魔をされる。隆家からは「大人しく定めを受け入れて、穏やかに生きるのが兄上のためだ」と諭されて、伊周も心が動いたかのようにも見えた。だが、伊周としても、もはや引けない状態だったのだろう。

 今回の放送では、兵藤公美演じる伊周の叔母・高階光子、松田るか演じる伊周の妻・源幾子(いくこ)と、その兄で阿部翔平演じる源方理(かたまさ)が登場している。

 光子が「このままでは敦康親王は、左大臣に追いやられてしまいます」と伊周に危機感を吐露すると、方理も「最近では帝も左大臣様にお逆らいになれぬと聞いております」と、伊周に対応を迫っている。

 伊周は道長を呪詛することになるが、次回「まぶしき闇」では、伊周一派の働きかけが露呈し、いよいよ失脚することになる。

 道長は一条天皇にどう働きかけて、孫の敦成親王を皇太子にさせるのだろうか。キーマンとなるのは、藤原行成である。

NHK大河ドラマ『光る君へ』で藤原伊周役を熱演する三浦翔平さん復権のラストチャンスに動く藤原伊周役を熱演する三浦翔平さん(写真:Domine Jerome/ABACA/共同通信イメージズ)

【参考文献】
『新潮日本古典集成〈新装版〉紫式部日記 紫式部集』(山本利達校注、新潮社)
『藤原道長「御堂関白記」全現代語訳』(倉本一宏訳、講談社学術文庫)『藤原行成「権記」全現代語訳』(倉本一宏訳、講談社学術文庫)
『現代語訳 小右記』(倉本一宏編、吉川弘文館)
『紫式部』(今井源衛著、吉川弘文館)
『藤原道長』(山中裕著、吉川弘文館)
『紫式部と藤原道長』(倉本一宏著、講談社現代新書)
『偉人名言迷言事典』(真山知幸著、笠間書院)

【真山知幸(まやま・ともゆき)】
著述家、偉人研究家。1979年、兵庫県生まれ。2002年、同志社大学法学部法律学科卒業。上京後、業界誌出版社の編集長を経て、2020年より独立。偉人や名言の研究を行い、『偉人名言迷言事典』『泣ける日本史』『天才を育てた親はどんな言葉をかけていたか?』など著作50冊以上。『ざんねんな偉人伝』『ざんねんな歴史人物』は計20万部を突破しベストセラーとなった。名古屋外国語大学現代国際学特殊講義、宮崎大学公開講座などでの講師活動も行う。徳川慶喜や渋沢栄一をテーマにした連載で「東洋経済オンラインアワード2021」のニューウェーブ賞を受賞。最新刊は『偉人メシ伝』『あの偉人は、人生の壁をどう乗り越えてきたのか』『日本史の13人の怖いお母さん』『文豪が愛した文豪』『逃げまくった文豪たち 嫌なことがあったら逃げたらいいよ』『賢者に学ぶ、「心が折れない」生き方』『「神回答大全」人生のピンチを乗り切る著名人の最強アンサー』など。