「党内野党」だったから言えた小言、もう信用できない?

「党内きっての理論派ではあるが、融通が利かず、支持基盤が弱い」という点では、頭の回転が速くポンポン小言を言い放つものの、長屋の住人や隣人からは煙たがられる幸兵衛さんにピッタリではないでしょうか。

 そして、当初「自民党の都合で解散すべきではない」と言っていたのに、総裁就任3日で解散を表明。一部では首相にもなっていない段階で解散を予告したのは「憲法違反では」と指摘されるほど、前のめりになっています。まるで、頭の中は妄想が膨らんでいて、抑えきれないでいるかのように。そんな姿も、幸兵衛さんを彷彿させます。

 石破さんは頭の中で、大好きなキャンディーズと戯れているのでしょうか。早速ネットには「石破さんは根っからのキャンディーズ好きだから『解散宣言』も真似たのだ」というコメントもありました。

「あてごとと褌(ふんどし)は向こうから外れる」とは、「嘘つき」が主役の「弥次郎」という落語にも出てくる諺(ことわざ)です。「とかくあてにしていることなんか、褌が前から外れやすいように向こうの都合で得てしてはずれちまうもんだよ」と我々のご先祖さまたちが予言していたとも言えましょう。

 石破さんのいままでの「小言」も、反主流派だったからこそ言えていた本音かもしれません。立憲民主党の野田佳彦代表は、「国会での議論が不十分だ」と訴え、日本維新の会の馬場伸幸代表は、「議論をしないまま解散するとは『敵前逃亡内閣』だ」とも主張しています。

 さあ、この解散が石破さんにとって凶と出るか吉と出るか。いずれにしても、総選挙で我々国民は、この国の将来を「石破氏を叩いて渡る」つもりで投票するしかありません。「長くはもた内閣」になりませんように、ご期待申し上げます。

立川談慶(たてかわ・だんけい) 落語家。立川流真打ち。
1965年、長野県上田市生まれ。慶應義塾大学経済学部でマルクス経済学を専攻。卒業後、株式会社ワコールで3年間の勤務を経て、1991年に立川談志18番目の弟子として入門。前座名は「立川ワコール」。二つ目昇進を機に2000年、「立川談慶」を命名。2005年、真打ちに昇進。慶應義塾大学卒で初めての真打ちとなる。著書に『教養としての落語』(サンマーク出版)、『なぜ与太郎は頭のいい人よりうまくいくのか』(日本実業出版社)、『いつも同じお題なのに、なぜ落語家の話は面白いのか』(大和書房)、『大事なことはすべて立川談志に教わった』(ベストセラーズ)、『「めんどうくさい人」の接し方、かわし方』(PHP文庫)、小説家デビュー作となった『花は咲けども噺せども 神様がくれた高座』(PHP文芸文庫)、『落語で資本論 世知辛い資本主義社会のいなし方』など多数の“本書く派”落語家にして、ベンチプレスで100㎏を挙上する怪力。