危険な国際的状況に置かれるイラン

 ヒズボラにもたらされた破壊によって、イラン政府が数十年も経験したことがないほど危険な国際的状況に置かれる可能性がある。

 ロケット弾の巨大な武器庫を持ち、イランを後ろ盾とする強大な武装勢力がイスラエルの北部国境に存在していることは常に、イスラエルに対するイランの抑止力のカギと見なされてきた。

 イランがヒズボラを解き放つことを恐れ、イスラエルはイランへの直接攻撃を避けるというのがその理屈だった。

 今、代理勢力や同盟国がよろめくなかで、イランはジレンマに直面している。

 イランはハマスの支援に直接駆けつけなかった。

 ヒズボラが激しい攻撃を受けるなかで今回も傍観すれば、仲間は裏切られたと感じ、イスラエルは自信を深めてさらに過激な行動を取るかもしれない。

 何十年もやると脅してきたイランの核施設に対する直接攻撃に踏み切る可能性もある。

 一方で、もしイランがイスラエルとの戦争に直接関与することになれば、体制の存続が危うくなる。

 特に、米国が紛争に巻き込まれる可能性が十二分にあるからだ(編集部注:イランは10月1日、イスラエルに200発近い弾道ミサイルを撃ち込んだ)。

 米国は、少なくとも理屈の上では、中東での戦争に関与しないことを誓っている。

 だが、イスラエルの防衛には固くコミットしており、中東で体制転換を実現できることを過去に実証している。

 ワシントンでは、米国主導の対イラク戦争が後に残した悲惨な状況は、今もまだ新しく、つらい記憶だ。

 だが、イランが核兵器を作る能力を間もなく手に入れることが知られているために、イスラエルとしては今攻撃する衝動が強くなる。