順大・海老原憲伸にライバル心を燃やす新興チームの絶対エース

 古川大晃(東大D4)が前半のレースを沸せた男子10000m。後続の集団で最後まで入賞争いを繰り広げたのが松田朋樹(湘南工科大4)だ。

 日本インカレでは見慣れないユニフォームの選手が第2集団の上位でレースを進める。入賞に一歩届かなかったものの、29分54秒61の9位でゴールに駆け込んだ。

「練習の一環として、箱根駅伝予選会につなげるような意識でレースに臨みました。予想以上の結果は凄く自信になったので、予選会でいい走りをして、学生連合入りを狙いたいと思います」

 松田は栃木・白鷗大足利高の出身。高校時代の5000mベストは14分38秒だが、記録を出した時期が遅く、駅伝強豪校のスポーツ推薦に間に合わなかった。

「あえてじゃなくて、強豪校に行けなかったんです……」

 その“悔しさ”を大学でぶつけるように成長した。昨年の箱根駅伝予選会は3年生主将として臨み、個人132位(1時間04分11秒)でチームトップに輝いている。例年なら関東学生連合に選出されるレベルだったが、第100回大会は選抜チームの編成がなかった。

「1年時は故障に苦しみましたし、環境面は強豪校と比べて厳しいと思います。YouTubeで他大学の寮を見ると、本当に凄いですし、食事も自分たちは当番制で準備していますから(笑)。でも高い強度の練習が自分には合っています」

 昨年の予選会、湘南工科大の総合順位は36位。同大競走部は2018年に創設したチームだけに、本戦出場は簡単ではない。それでも松田はモチベーションを落とすことなく、競技に取り組んできた。

「高校時代から箱根駅伝を走りたいという思いがあったんです。狙い方としてはちょっとイレギュラーかもしれませんが、関東学生連合で目指したいと考えていました」

 夢舞台を狙うなかで、追いかけてきたのが同じ栃木・那須拓陽高出身の海老澤憲伸(順大4)だ。

「自分で勝手に意識してきました。高校時代は憧れていましたし、凄いなと思いながら追いかけてきたんです。とにかく海老澤君に勝ちたいなという気持ちでやってきました」

 海老澤は日本インカレの10000mにエントリーしていたが、欠場した。それでも前回の箱根駅伝は3区を任されており、正月のレースでは悲願の“直接対決”が実現するかもしれない。

「箱根予選会はキロ3分押しを目標にしています。ゴールタイムでいうと1時間03分20~30秒。レースコンディションにもよりますが、個人40~50位以内を狙っています。そして本戦では大学の近くを通る3区か8区を走りたい!」

 松田は湘南工科大で初の箱根駅伝ランナーになって、母校に新時代をプレゼントするつもりだ。