一方、保守思想は「人間というのは誰しも欠陥を持っている。そんな人間が理想的な社会など作れない。しかし、少しずつ改革、改善をしていくことは可能だ」という考え方である。右翼思想とは、また別物である。

 野田氏は、そういう政治的立場だと思う。以前、政治評論家の三宅久之氏(故人)、野田氏と一緒にテレビに出演したことがある。その際、三宅氏が野田氏のことを「この人は必ず将来、総理になる人だから」と言っていたことを想起する。その意味では、ある種の安心感を与える政治家である。また早朝の駅頭での朝宣伝を長年続けていることには、頭が下がる。

 首相時代、民主党のマニフェストにはなかった、消費税5%を段階的に10%に引き上げる増税法案を強行した。元衆院議員の田中秀征氏は「かつて日本の政治史に、これほどまで明確な重大公約違反があっただろうか」と話している。実際、民主党内からも70人を超える造反者が出た。民主党の弱体化を招くことになった。結局、財務省の言いなりだったことが裏目に出たとも言える。

 党首討論で安倍晋三自民党総裁(当時)とのやりとりで解散を確約したが、この選挙によって民主党は大惨敗を喫した。野田氏は、あれほどの大惨敗を喫するとは思っていなかったはずだ。情勢認識の甘さが出た。その後、民主党は党名を民進党に変更し、今は立憲民主党になっている。

 野田氏は、いま政権交代を声高に語っているが、鳩山由紀夫氏、菅直人氏らと共にその政権交代を台無しにした張本人の一人だということを自覚すべきである。