壁画制作の夢がかなう
メキシコではもうひとつ、壁画運動との出会いもあった。壁画は1910年代のメキシコ革命後に大切な役割を担ったメディア。読み書きができない民衆は、壁に描かれた絵を見て新しい社会の理念を理解しようとした。
いつかは自分も壁画の制作に取り組みたい。そんな思いを胸に、北川は《タスコの祭》(1937年)、《雑草の如くⅡ》(1948年)など、壁画の下図ともいえる壮大でメッセージ性の強い作品を手がけていく。そして1959年、ついに壁画制作に関わる機会を得る。CBC会館(名古屋)を皮切りに、旧カゴメ本社ビル(名古屋)、瀬戸市立図書館と、公共性のある場所に設置されるモザイク壁画のプロジェクトに参加した。展覧会では壁画の原画が展示されている。
民衆へのあたたかなまなざしと、鋭い社会批判精神の両方を併せ持って激動の20世紀を生きた画家・北川民次。いや、画家というよりも、ヒューマニストとの呼び方が相応しいのかもしれない。
「生誕130年記念 北川民次展―メキシコから日本へ」
会期:開催中~2024年11月17日(日)
会場:世田谷美術館
開館時間:10:00~18:00 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日、10月15日(火)、11月5日(火)(ただし10月14日(月・祝)、11月4日(月・振休)は開館)
お問い合わせ:ハローダイヤル 050-5541-8600