――まずは娘さんが希望した精神科の受診を検討されたのですね。

西 いくつかのクリニックに予約の電話をしたのですが、初診の予約が数カ月先になる、15歳以下は児童精神科を専門しているところへと言われてしまいました。娘の状態からして数カ月も待つことはできないので、それなら家庭医を受診しようと考えました。

「何でも相談に乗ってくれる家庭医」を受診するという選択

――あまり聞いたことがないのですが、家庭医とはどういう医師なのでしょうか。

西 家庭医は家庭医療学を修めた医師で、総合診療医、プライマリ・ケア医とも呼ばれます。家庭医療は「身近にあって、何でも相談にのってくれる総合的な医療」で、内科や呼吸器科といった専門に特化したものではなく、さまざまな不調や病気に対応します。診察した上で専門的な治療が必要だと判断すれば、その医療機関を紹介します。

 私自身、初期研修で家庭医療を学びましたが、患者側になるのは初めてでした。近くの家庭医を探して受診し、1時間近くじっくりと話を聞いてもらいました。それから血液検査や思春期の不調としてよくある起立性調節障害の検査をした結果、特に病気は見つからないが、うつ病とも思われないとのことでした。結果的には、ここで月経に関連する不調という本当の原因にはたどり着けなかったのですが、私は家庭医を受診したのはよい手だったと思っています。

*写真はイメージ(写真:chaponta/Shutterstoc)
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――どの科を受診したらいいのかわからないような不調がある時に、家庭医にかかるという選択肢を知っておくとよいのですね。

西 私は内科が専門なので、不調を訴える患者さんに内科的な異常が何もなければ、「まずは安心して下さい」と話しますが、つらい症状はあるわけだから「心の方かもしれないので精神科に相談してみたらどうでしょう」と言うこともあります。その患者さんが精神科に行っても、「異常はありませんから様子を見て下さい」となることは、けっこうあると思うのです。

 患者さんやご家族が目星を付けた専門医を受診し、そこに該当する症状ではないとされたら、また違うところへ……と探し回るのはつらいですし、医師から突き放されたように感じてしまうでしょうから本当にきついことだと思います。

 家庭医は「一緒にやっていきましょう」というのが基本的なスタンスで、とことん付き合ってくれる診療体系になっています。もし、家庭医が紹介した専門医から「ここではありません」と言われたらまた戻ってきていい、まさにHomeとなるお医者さんです。「15歳以下は小児」のような年齢で線引きされることもありません。

家庭医は、「日本プライマリ・ケア連合学会」ウェブサイトの「家庭医療従事者を探す」で探すことができる。