プロ野球が開幕した。北海道の球団と言えば、もちろん北海道日本ハムファイターズである。昨シーズンの観客動員数は約187万人と北海道移転後の最高記録を達成。パ・リーグでは福岡ソフトバンクホークスに次ぐ2番目の数字だ。ファイターズの勝敗に道民が一喜一憂する季節がやってきた。
さて、北海道を本拠地とする「ファイターズ」は日ハムだけではない。2009年1月に札幌市で新しいファイターズが結成された。その名を「除雪ファイターズ」という。
何をするチームなのかというと、文字通り雪かきである。やる気と体力のある人ならば、誰でもメンバーとして登録できる。登録した人は、雪かきをしてほしいという要請に応じて指定の場所に出向き、雪かきや雪おろしを行う。
〒063-0811
北海道札幌市西区琴似1条3丁目3-12 しなねん琴似ビル3F
除雪ファイターズを結成したのは、札幌市に本社を構えるエコモットというITベンチャー企業だ。雪かきの料金は1時間1500円。エコモットはそのうちの500円を手数料として受け取り、1000円が除雪作業員(ファイター)の取り分となる。
ITベンチャーと「雪かき」というのはなかなか結びつかない。なぜ、エコモットは除雪作業員のチームを結成したのだろうか。
逆風の中で創業し急成長
エコモットは2007年に入澤拓也社長が創業した会社だ。ワールド山内の記事でも述べたが、北海道の景気は大変厳しい状況にある。しかし、エコモットは逆風の中で創業したにもかかわらず、目覚ましい勢いで成長している。
創業した2007年度(2007年12月期)の売り上げは約3600万円。初年度から利益も確保した。翌年の2008年度は約1億2700万円と前年度の3倍以上に売り上げを伸ばした。2009年度はやはり3倍近くの成長となる3億円の売り上げを目標としている。
入澤社長は1980年生まれの29歳。とても若い社長である。しかし、会社の利益を上げることはもちろんだが、北海道に暮らす人間の1人として地域や社会のことを真剣に考えている。この地域貢献や社会貢献に対する姿勢が、会社の躍進につながっているようだ。
ロードヒーティングのオン・オフを人の目で判断
エコモットの主力商品は「ゆりもっと」。ロードヒーティングの灯油代節約を目的とした監視代行サービスだ。
ロードヒーティングとは地中に埋め込まれたパイプに、ボイラーで沸かした温水を通し、地面の雪を溶かす仕組みだ。ロードヒーティングを自動運転するシステムは珍しいものではない。一般的には「降雪センサー」が用いられる。屋外に取り付けられた降雪センサーが降雪を感知すると、ロードヒーティングが自動的に稼働するという仕組みだ。
ゆりもっとは、降雪センサーを使わない。雪を溶かしたい場所に屋外カメラを取り付け、遠隔地でオペレーターが降雪状況の映像をチェックし、ロードヒーティングを遠隔制御する。つまり、人間が目で見て判断して、こまめにロードヒーティングのオン・オフを操作するのだ。システムはITを使っているが、やっていることはアナログなのである。