北海道経済が沈んでいる。日本中が不況に見舞われる中、とりわけ景気の低迷が深刻なのが北海道だ。

 東京商工リサーチ北海道支社の集計によれば、北海道の企業倒産件数は2009年1月まで、8カ月連続で前年同月の件数を上回った。負債が10億円を超える大型倒産も相次いだ。特に1月には札幌市の大手百貨店、丸井今井が倒産。札幌市民に大きな衝撃を与えた。

(株)ワールド山内
〒061-1274
北海道北広島市大曲工業団地4丁目3-33

 また、北海道商工会議所連合会が1月に発表した道内中小企業の業況判断指数(DI)を見ても、北海道の業況は一段と悪化し、歯止めが利かない状況である。

 だが北海道のすべての会社が悲嘆に暮れているのかというと、決してそんなことはない。寒風吹きすさぶ不景気とはまったく別の世界にいるような会社も存在する。北広島市に本社・工場を構える部品製造メーカー、ワールド山内(北海道・大曲工業団地)だ。

ワールド山内の本社・工場の外観。ロビーはらせん階段があるモダンな吹き抜けスペースで、とても板金・プレス工場とは思えない

 2009年度の売り上げは約16億円の見込み。前年比で約1.5倍の伸びである。利益の伸びは、もっと大きいという。

 全国的なヒット商品があるわけではない。ワールド山内は基本的に最終製品を作るのではなく、顧客企業から発注を受けて部品を作る会社だ。要は下請けの板金・プレス工場なのだ。

 落ち込みが激しい製造業の中で、さらに下請けという業態にもかかわらず、これだけ業績を伸ばしていることは驚きに値する。

取引先の7割は道外の企業

 生産する部品の数は月に約3万点。あえて「何でも屋」に徹し、特定の業界に偏らないように、取引先を広げてきた。現在、取引先は自動車、建築・土木、各種プラント、産業機械、電気機器、食品水産加工、医療機器など10種類の業界にわたる。

山内静治社長

 最近は、環境、エネルギー分野の仕事が増えてきた。「特に鉄道や太陽電池、リチウムイオン電池関連の仕事がこれから増えると見ています。それに供えて技術力を蓄えているところです」(山内静治社長)

 特筆すべきなのは、北海道以外の顧客の多さだ。取引先の7割は道外の企業である。道外との物流には主にJR貨物(日本貨物鉄道)のコンテナ列車を使う。「以前よりもだいぶ輸送費が安くなった」とはいえ、やはり本州とは物理的な距離がある。それにもかかわらず、北海道にいることをまったくハンディとしていない。