個人消費や不動産市場に逆風も

 日本の高齢者のように、ベービーブーマー世代がミレニアル世代(1981年から1990年代半ばまでに生まれた世代)の子供たちに早期に財産を贈与する動きが生まれているが、効果のほどは知れているだろう*2

*2ベビーブーマー世代は生前贈与を始めている… ファイナンシャルプランナーが指摘する注意点とは?(8月13日付、BUSINESS INSIDER)

 高齢者に富が集中することで、世界に誇る米国の旺盛な個人消費などに陰りが出てくるのは時間の問題ではないかと思えてならない。

 少子高齢化は米国の不動産市場にも打撃を与える可能性がある。オフィス需要はリモートワークの定着により既に低迷しているが、生産年齢人口が減少に転じる事態となれば、足元の旺盛な住宅需要ですらスランプに陥ってしまうかもしれない。

 21世紀の世界経済を牽引してきた中国の変調が続く中、米国経済への期待は高まるばかりだが、少子高齢化の悪影響を回避することは難しいのではないだろうか。

藤 和彦(ふじ・かずひこ)経済産業研究所コンサルティング・フェロー
1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。