江戸へ奇跡のカムバック

《雨宿り図屛風》英一蝶 六曲一隻 江戸時 18世紀 東京国立博物館【展示期間:9/18~10/14】

 江戸には二度と帰れないと覚悟していた一蝶だが、将軍・綱吉が死去。その恩赦により、一蝶は晴れて自由の身となった。これは夢か、現実か——。一蝶は荘子の説話『胡蝶の夢』にちなみ、この時から英一蝶と名乗るようになった。

 再帰後は「今や此の如き戯画(風俗画)を事とせず」と、一蝶の代名詞である風俗画から離れることを宣言。謹直な仏画や狩野派の画法による花鳥画、古典に学んだ物語絵などに取り組むが、周囲は“風俗画の一蝶”を放ってはおかない。彼の元には風俗画の依頼が相次ぎ、町や農村で生きる人々を描いた《雨宿り図屛風》や《田園風俗図屛風》といった大型の作品を制作していく。

 1724(享保9)年、73歳で波乱万丈の人生を終えた英一蝶。辞世の句「まぎらはす 浮き世の業の色どりも 有りとや月の薄墨の空」からも、一蝶はやはり風俗画の人だったのだと感じさせられる。

 

「没後300年記念 英一蝶 ―風流才子、浮き世を写す―」
会期:開催中~2024年11月10日(日)※作品保護のため、会期中展示替を行います
会場:サントリー美術館
開館時間: 10:00~18:00(金曜、11月9日(土)は10:00~20:00) ※入館は閉館の30分前まで
休館日:火曜日(11月5日は 10:00~18:00)
お問い合わせ: 03-3479-8600

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