島暮らしでも衰えない創作意欲

《吉原風俗図巻》(部分) 英一蝶 一巻 元禄16年(1703)頃 サントリー美術館 【通期展示(場面替あり)/本場面の展示期間:10/16~11/10】

 真相は定かではないが、三宅島に島流しとなってしまった一蝶。当初は「もう二度と江戸に帰ることはできない」と落ち込んだというが、その暮らしは罪人とは思えないくらい充実したものだった。江戸の仲間やパトロンたちは一蝶の生活が成り立つよう、絵の制作を依頼。江戸から紙や画材、絵の代金や米を送った。一蝶はその米を島民に売る商売もしていたというから、なんとも商魂逞しい。

 そして、流刑時代に描いた作品が実に素晴らしい。この時期の作品は「島一蝶」と呼ばれ、特に高く評価されている。配流中の作品は、江戸の知人からの発注によるものと、三宅島や近隣の島々の島民のために制作したものの2つに大別。前者には江戸での遊興の日々を題材にした風俗画が多く、後者は神仏画や吉祥画など信仰関連の作品が大半を占めている。

 島一蝶時代の最高傑作といわれ、重要文化財に指定されている《布晒舞図》。布晒舞とは川で布をさらす様子を舞にしたもので、本作では小柄な舞手が自分の身長よりもはるかに長いさらし布を巧みに操っている。扇を持つ小さな手や細い指先の繊細な表現が見事。余白を生かし、人物をリズミカルに配した構図も心地よく、音楽が聴こえてくるよう。

《神馬図額》英一蝶 一面 元禄12年(1699)頃 東京・稲根神社 【通期展示】

《神馬図額》は三宅島の南方に位置する御蔵島の稲根神社に伝わる絵馬。画面いっぱいに跳ね上がる神馬のダイナミックな躍動感。たてがみや尾の毛一本一本まで丁寧に描いた繊細さ。一蝶の熱量が感じられる名品だ。