イスラエルの情報機関「モサド」が関与か

 現地からの報道などによると、ヒズボラの最高指導者ナスララ師は2024年の初め、メンバーに対し携帯電話やスマホを持つのをやめ、重要な通信にはポケベルやトランシーバーを使うよう指示しました。位置情報がイスラエルに漏れていることを察知し、幹部が集まる場が知られて集中攻撃される事態を避けるためでした。

 ヒズボラはポケベルやトランシーバーを調達し、全国のメンバーに配布しました。その機器の中に爆薬が仕掛けられていたもようです。

 ポケベルは台湾製で、約5000個が配られていました。ただ、台湾のメーカーはハンガリーの会社に製品を納入しただけであり、爆発とは無関係だと主張しています。トランシーバーは日本のメーカーのものですが、10年前に製造終了した製品であり、やはり爆発とは関係ないとしています。

爆発したトランシーバーの製造元と報じられたアイコム、関与は否定(写真:ロイター/アフロ)

 今のところ、どの段階で機器に爆薬が仕掛けられたのか確定はできていませんが、流通経路のどこかで爆発物が埋め込まれたと考えられています。相手方のネットワークに侵入して生産活動を阻害したり情報を盗んだりする「サプライチェーン攻撃」の一種と言えるかもしれません。

 そうしたなか、今回のレバノンでの通信機器爆発事件は、イスラエルの情報機関「モサド」が時間をかけて準備したという見方が出ています。

 では、手のひらに乗るような小さな機器は、どのようにして強い殺傷能力を持つ武器に変身したのでしょうか。