- FIRE願望を持つ若者が増えているとされるが、「単身世帯増と結びつくと人手不足が加速し、インフレ圧力になる」とのレポートが話題を呼んでいる。FIREとは「Financial Independence, Retire Early」の略で、経済的に自立して早期リタイアすることを指す。
- 執筆者はみずほリサーチ&テクノロジーズの河田皓史主席エコノミスト(37歳)。何を隠そう、河田氏自身もFIRE願望があるとレポートで告白している。
- 前編ではレポートについて詳細を聞いたが、後編では河田氏自身がFIRE願望を持つようになった経緯について聞く。河田氏は東京大学卒業後、日銀に入行し米大で修士も取得したエリート。そんな彼が、「会社で身を粉にして働き、昇進して、家庭を持つ」という「普通の生き方」に疑問を感じるのはなぜか。
(湯浅大輝:フリージャーナリスト)
>>【前編】30代「FIREしたい」エコノミストの大胆予測が話題!FIRE願望の単身世帯増加が人手不足を加速させる?
人間らしく生きるには、労働をやめる必要がある?
──話題となったレポートの注釈に「なお、筆者(30代)自身は強いFIRE願望を持っており、FIRE側に共感する」とあります。河田さんご自身も、FIREしたいのですか。
河田皓史氏(以下、敬称略):FIREしたいです。大体、50歳までを目標にしています。FIRE後は、旅行したり、本を読んだり、自分の専門性を活かした社会活動をするなどして生きていければと思っています。
──FIRE願望を持つようになったきっかけは?
河田:何のために生きているか分からないと感じたことが全てですかね。現在は転職して、ほぼフルリモートで勤務していますが、前職(日銀)では毎日出勤。朝早く起きて、働き詰め、帰宅する頃にはバタンキュー。土日も平日の疲れが残って寝て過ごすという生活が続いていました。
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やっぱり私も人間ですから、海外旅行もしたいし、ゆっくり本を読む時間も欲しい。そうなると、「労働」に縛られる人生から抜け出さないといけないと思ったのです。
現在の勤務先はフルリモートが認められていますし、労働時間も減少しました。ですので、もう少し頑張りたいなとは思っています。
──X上でも「仕事そのものは嫌いではないが、劣悪な労働環境で長年働きたくない」というような内容のポストに“いいね”が多くついていました。
河田:私も15年働いていて、仕事は面白いこともありますし、やりがいを感じる瞬間も多くあります。