フィリピン沿岸警備隊提供の映像より。8月31日、フィリピンと中国とで係争中の南シナ海サビナ礁付近で、中国沿岸警備隊の船(右)がフィリピン沿岸警備隊の船BRPテレサ・マグバヌアに衝突してきた(提供:フィリピン沿岸警備隊/AP/アフロ)
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「見逃し」厳禁

 国家の危機管理の世界では、「『空振り』はしてもよいが、『見逃し』をしてはならない」と、よく言う。

 野球なら、「空振り」でも「見逃し」でも、三振に変わりはない。だが危機管理の場合、まったく異なる。

 例えば、北朝鮮が新型ミサイルを発射したとする。日本政府は直ちに「Jアラート」を鳴らして、国民に警鐘を発する。だが幸い、ミサイルは日本海に落下し、日本列島まで来なかった。

 この場合、日本列島にミサイルは落下しなかったのだから、「Jアラート」は「空振り」だったことになる。それでも、日本政府が非難されることはない。

 だが万一、逆に「Jアラート」が鳴らず、北朝鮮のミサイルが、日本列島に落下したらどうなるか? 「見逃し」によって、時の内閣が総辞職を迫られるほどの失態となるに違いない。

 そのため、危機管理においては、とにかく「見逃しをしない」ことに尽きる。それには、「老婆心を持って、常に最悪の事態を考えておく」ことが肝要だ。