経済のダイナミズムに合わせた柔軟な金融政策を

 金融緩和の度合いを、「さすがに1ドル160円はないだろう」という時には速く、風向きが変わってきたらゆっくり、そう調整していくのは、金融政策として当然のことではないか。

 その延長線上で、金融を緩和した方が良さそうになったら、現在の利上げのロジックに縛られずに金利を引き下げればいい。それが長い目でみて日本経済にプラスになると判断されるのであれば。

 そういう対応をすると、また、「言っていることが違う」「過去の利上げは間違いだった」という非難が出てくるのだろう。でも、望んでいた状態が実現するまでは陣立てを崩すなという頑なな姿勢でやってきて、それでも思った通りにはならなかったことを我々は見てきたのではなかったのか。

 このあたりで経験に学んで、今、感じられる経済のダイナミズムに合わせて、金融環境の振れがあっても構わないのではないか。それこそが、ビジネスモデルの新陳代謝を後押しし、構造的に日本経済の生産性を高めることにつながっていく。

 金融政策は本来、マクロ安定化政策であり、景気循環に沿って反循環的に動くものだ。にもかかわらず、2%インフレになるまで、景気循環を無視して、必要なら景気拡大局面でも金融緩和を強化するということをやってきた。

 そういう時期が長かったため、金融政策の変更を受け止める側の頭も固くなってはいまいか。

 これまでと同じ思考回路で考えた予想が裏切られたので、「株安の犯人を利上げにしてしまえ」「まだ利上げはしなくてよい」等々の主張をしているところはないか。

 ここで肩の力を抜いて、新鮮にもう一度考えてみたい。