『ザイム真理教』よりタチが悪い「プレート説信仰」
というのは、1960年代に登場したプレート説は現在、その前提のほとんどは正しくないことが明らかになっているからです。
にもかかわらず、ほとんどの日本人がプレート説に何ら疑問を呈しない状況にあるのです。
2023年から2024年にかけて、経済アナリストの森永卓郎氏の『ザイム真理教―それは信者8000万人の巨大カルト』(フォレスト出版)という本がベストセラーになりました。
この本のタイトルにある「ザイム」とは、改めて言うまでもなく財務省のことです。
著者である森永氏は「借金で首が回らない政府が、財政破綻を回避するために増税することはやむを得ない」とする財務省の主張を「ザイム真理教」と呼んでいます。
森永氏によれば、財務省の財政緊縮策のせいで日本経済は成長できなくなってしまったのに、国民の7割近くが財務省の政策に理解を示しているそうです。
森永氏は、日本人を不幸にしている財務省の政策の問題点を広く一般の方々に理解してもらうためにこの本を書いたのだと述べています。
この『ザイム真理教』を手に取って思ったのは、「はじめにプレートありき」と唱える、言わば「プレート真理教」のほうがはるかにヤバいのではないかということです。
なぜなら、ザイム真理教の信者は日本人の7割弱(8000万人)ですが、プレート真理教の信者は日本国民のほぼすべて(1億2000万人)だからです。
地震予知は日本人1人1人の生死に直結します。プレート説が日本に導入されてからの50年間、日本では多くの巨大地震が発生しましたが、プレート説に基づく地震予知はすべて外れています。
森永氏は「ザイム真理教に宗教性はない」と述べていますが、「プレート真理教にはキリスト教の思想的背景がある」との指摘があります。
新トマス主義と呼ばれるキリスト教思想です。
ルネッサンス時代直前のイタリアの修道士トマス・アクイナスが神の存在を系統立てて説いた教義を19世紀に甦らせたのが新トマス主義です。
19世紀の産業革命以降の物質中心主義がはびこる世相に対して、トマスの教えをもとに唯一の神の存在を主張したのですが、プレート説の確立に参画した多くの研究者がこの宗教思想を支持していたことがわかっています。
彼らは地球の表面にプレートがあると見立て、プレートによってすべての地質現象を説明しようとする構図は新トマス主義と同じだと思います。