今年は中朝外交関係樹立75周年の年であり、「中朝親善年」です。

 新たな時期、新たな情勢下で、中国側は引き続き、戦略的な高みと長期的な角度から、中朝関係を見て、対応していきます。朝鮮側と共に、戦略的な意思疎通を深化させ、自律と協調を強化させ、伝統的な中朝親善協調関係を、共同で素晴らしいものに守護し、素晴らしく公表し、素晴らしく発展させていきます。社会主義の偉業を共同で推進しながら、両国の国民により多くの福利を準備してあげ、地域と世界の平和と安定、発展繁栄に、より大きな寄与を行う用意があります。

 貴国の隆盛繁栄と国民の幸福、安寧を祈念します。

中国共産党中央委員会総書記、中華人民共和国主席 習近平

 2024年9月9日 北京>

 以上である。興味深いのは、中国でも、「習近平が朝鮮の最高指導者・金正恩に祝電を送った」というニュースが、同日の3番目に報じられたことだ。普段は北朝鮮のニュースなど、皆無に等しいだけに、ひときわ目を引いた。

北朝鮮の歓心を買いたくなった中国

 このところ西側メディアは、「中国と北朝鮮の関係はギクシャクしている」と伝える。だが今回の祝電は、明らかに習近平主席から金正恩委員長へのラブコールである。それは祝電の冒頭で、わざわざ「私自身の名前で」と加えていることからも分かる。

 中国は実のところ、11月の米大統領選でドナルド・トランプ前大統領が勝利したら、北朝鮮はロシアに続いて、アメリカにも靡(なび)いてしまうのではと危惧している。その前に、来月に迫った中朝国交樹立75周年を盛大に祝おうと、北朝鮮側に呼びかけているのだ。それが、祝電の真意である。

 中国側にとってベストは、金正恩委員長が北京を訪問することである。これが実現すれば、来たるアメリカの新政権に対して、大きな外交成果となる。おまけに「盟友」だが気の抜けないロシアに対しても牽制となる。

 同様に北朝鮮としても、洪水による凶作を思えば、北京訪問による「豊富なプレゼント」は、喉から手が出るほど欲しい。これから極寒の冬を迎え、頼みの朝鮮人民軍に対するケアさえおぼつかない状態なのだ。

 というわけで、これから中朝が急接近していく可能性がある。最後は両国トップの胸先三寸だ。