早貴被告に実刑判決

 このような法廷での争いの末、9月2日、和歌山地裁で判決が下った。

――性的な接触に関しては言い分が食い違い、被害者がことさら過小に述べていることは否定できない。しかし、被害者が被告との性的接触を得たいという意図を有していたとしても、被告の嘘を信じていたことと両立するもので、「嘘だとわかっていた」と推認する根拠にはならない。これらのことから、被害者は被告の嘘に騙され、金を振り込んだと判断した。

 被害者には、若い好みの女性の歓心を得たいという気持ちもあったと考えられるが、相手のそのような気持ちを利用して大金を騙し取る行為の違法性を特に軽くみることはできない――

 とこのように述べ、懲役4年6カ月の求刑に対し、懲役3年6カ月の実刑判決を言い渡した。

 量刑が求刑に比べて1年短くなっているが、そこは犯行当時、早貴被告が19歳の未成年で、犯罪歴もなかったことが考慮されたようだ。

 そもそも今回の裁判は、前述のように、ドン・ファン殺人事件で逮捕・起訴されている早貴被告の口座を調べていた和歌山県警の捜査員が、不自然な大金の入手金の記録を見て、M氏に接触、「早貴被告を訴えて下さい」と依頼して始まったものだという。

 その意味では捜査陣は、カネを騙し取るためなら男性に平気で嘘をつく人物、という印象を世間に抱かせることに成功したとも言える。

「ドン・ファン」野崎幸助氏の葬儀で喪主を務めた、喪服姿の早貴被告(撮影:吉田隆)

 裁判員裁判で行われるドン・ファン殺人事件の裁判は果たしてどのように動いていくのか。9月12日に初公判が開かれ、現在のところ、12月12日に判決が下される予定になっている。