「……キスしようとしましたが、唇は避けられて、頬にしたことはあります」

「胸を触ったことは?」

「……それは服の上から少し触れたことがあります」

 女性との接し方については、まるで男子中高生のような初々しさと言えなくもない……。もっとも早貴被告は「会うたびに体を触られ、徐々に下半身や性器を触られるようになっていった」と述べている。それでもM氏は、セックス行為が無かったという点は頑として譲らなかった。

被告弁護人の執拗な追及

 次に弁護人は質問の方向を変えた。3人のキャバクラ嬢の名前をあげ、彼女たちと付き合っていたM氏の行状を明らかにしたうえで、M氏と彼女らのメールを読み上げたのである。

「早く○○ちゃんとラブ・ラブしたいよ……」

 M氏が早貴被告以外のキャバクラ嬢へ送ったメールの文面だ。その内容からキャバクラ嬢との肉体関係を証明しようと狙ったのだろう。

「ラブ・ラブとはセックスのことですよね」

 と弁護人は追及した。

 これに対してM氏は、

「いや、そうではなく恋愛感情的な意味です」

 とあくまでもセックスを意味することではないと終始一貫して否定し続けた。M氏の主張の通りなら、彼は大金を手にしたばかりに派手にキャバクラ遊びに繰り出したまではよかったものの、キャバクラ嬢たちにとってみればカネ払いのいい太い客でしかなかった、ということなのかも知れない。

 それにしても、早貴被告にカネを騙し取られた側なのに、女性に対してどこまで下心があったのかを、メールの文面を暴露されつつ追及される状況に立たされたM氏にはまさに同情するほかない。