英ブックメーカー、もはや「賭け」成立せず

 もちろん、価値ある勝利であることは間違いない。これで、世界戦は9戦連続KO勝利。自身が持つ日本選手の世界戦連続KO勝利記録を更新した。世界戦通算23勝目も、元世界4階級王者の井岡一翔選手(志成)を上回り、日本記録の単独1位に初めて躍り出た。

(写真:山口フィニート裕朗/アフロ)

 もはや勝利は規定路線。英大手ブックメーカー、ウィリアムヒルのオッズは1.02倍。賭けが成立していないような状況だった。

 井上選手と契約する米興行大手トップランク社のボブ・アラムCEOは試合後のリング上で観客を前に高らかに宣言した。

「年内にもう一度、東京で試合を行い、来年には(アメリカの)ラスベガスで大きな大きなイベント(試合)を行いたい」

 アラム氏は今年5月、井上選手の海外戦について、潤沢なオイルマネーを持つサウジアラビアのスポーツエンターテインメント部門のトップから直々に試合実現のオファーを受けたことを明らかにしていた。一方で、「ボクシングの軽量級は、井上選手がいる日本が世界の中心にある」とし、海外興行には消極的だった。

 そんなアラム氏が今回は「井上選手の市場はまずが日本だ。そして、次はアメリカだ」と米国での興行実現に意欲を示す。その背景には、同じく日本が誇る世界的なスーパースターでもある、米大リーグ、ドジャースでプレーする大谷翔平選手の存在があった。

 アラム氏は8月31日、横浜市内での記者会見に同席した後、日本メディアの取材にこう語っていた。

来年は井上選手の試合と大谷選手の試合のダブル観戦も実現する?(写真:AP/アフロ)

「(ドジャースの本拠地であるロサンゼルスを中心に)大谷選手の試合には、多くの日本人が観戦に来ている。井上選手がラスベガスで試合を行うことになった場合、日本人も来てくれるだろう」

 実際、日本国内の多くの旅行代理店がロサンゼルスへのメジャーリーグの観戦ツアーを組んでいる。日本からラスベガスへ渡航する場合、ロサンゼルスが経由地になることが多く、井上選手の試合時期や日程にもよるが、日本からの旅行客は、大谷選手の試合とのダブル観戦も夢ではなくなる。

 井上選手が来年、ラスベガスで試合をするとなれば、約4年ぶりの再上陸となる。