2023年のWBCでも注目を集めたのは大谷選手らメジャー組だった(写真:UPI/アフロ)
  • プロ野球を揺るがす「球界再編」騒動から20年が経過した。2004年6月13日、日本経済新聞が近鉄とオリックスの合併を1面でスクープしたことに端を発した再編の動きは、パ・リーグ側の巨人との公式戦を開催したいとの思惑があった。
  • あれから20年。かつて「ドル箱」と呼ばれた巨人戦の地上波中継は激減し、世間の注目は米大リーグ、ドジャースの大谷翔平選手らが活躍する海の向こうへと移っていく。
  • 巨人頼みだった球界は地元密着という新たな路線に舵を切ったものの、プロ野球のファン層も高齢化が進み、子どもたちの競技離れも深刻化する。球界再編から20年、日本野球の未来は決して明るくない。

(田中 充:尚美学園大学スポーツマネジメント学部准教授)

 6月16日、杜の都・仙台は歓喜に沸いた。楽天が球団創設20年目にして初めてセ・パ交流戦の優勝を決めたからだ。

 楽天創設の転機こそが、2004年のプロ野球再編だった。オリックスと近鉄が合併し、さらには「パ・リーグでもう1球団の合併」の可能性も浮上――。当時のプロ野球は、10球団による「1リーグ制」への移行へと傾倒していく。

6月16日、広島に勝利してセ・パ交流戦で優勝を決めた楽天(写真:共同通信社)

 当時のプロ野球の中心は、「球界の盟主」と呼ばれた巨人だった。セ・リーグ球団は、全国中継の放映権料が1試合1億円以上とされたドル箱の「巨人戦」を抱え、巨人戦がないパ・リーグ球団は大きなハンディを背負って赤字の経営体質が慢性化。球界再編の動きは、巨人を取り込みたいパの思惑が反映されていた。

 当時の報道によれば、近鉄とオリックスはそれぞれ球団経営で30億円を超える赤字を出し、親会社が補填していた。「広告塔」の役割が大きかったプロ野球をスポーツビジネスとしてとらえる向きもほとんどなく、球団数が市場規模にマッチしていないという声がオーナー側にあった。

 両球団が合併した場合、「セ6、パ5」といういびつなリーグ運営になるが、パが4球団となれば、リーグとしての価値も魅力も大きく損なう。そこで浮上したのが「1リーグ構想」だった。