これに対して、2次レーダーは、地上局などが航空機に対して質問信号と呼ばれる電波を送信し、航空機に搭載されたSIF/IFF装置が、応答信号と呼ばれる電波を送り返します。航空機に搭載されたSIF/IFFは、トランスミッタ(送信機)とレスポンダ(応答機)の機能を持つため、この2つの言葉を合成した「トランスポンダ」と呼ばれることもあるのです。前述のスコーク7700は、質問信号に対して7700と回答したという意味になります。

 今回の友軍相撃では、この方式の問題が関係している可能性があります。

 軍用として使用されるモード4、モード5は、いわゆる“西側”だけで使用されているものです。アメリカを中心とし、NATO各国や日本も使用しています。

 ウクライナに供与されているか否かは情報がありませんが、恐らくウクライナには供与されていないでしょう。

 いわゆる軍事機密の中でも最高度のものですし、墜落や地上装置の鹵獲(ろかく)、それにウクライナ軍内に潜り込んでいるロシアスパイにより漏洩の可能性が高いことが理由の一つ。

 もう一つの理由は、ウクライナが従来から使用している“東側”装備には搭載できないためです。パトリオットにモード4を搭載していても、ウクライナが今も使用しているSu-27やMig-29では使用できないのです。

 モード4やモード5が西側のものだと言いましたが、東側には当然、相当するものがあります。ウクライナが今も使用しているS-300のような地対空ミサイルやSu-27などの航空機は、それを使用することができますが、F-16は使えません。

 つまり、地上装置も航空機も、東西の装備が混在するウクライナでは、この軍用IFFを使うことはできないのです。

 結果として、敵味方識別装置としては、民間機にも使用され、東西装備に共通のSIFだけが使用されていると思われます。ただし、S-300とSu-27の間など、東側装備の間では、上記の東側IFFが使用されていたと思われます。

 かなり心もとない状態のように思うかもしれませんが、地上で使用され、鹵獲される可能性の高い兵器には、元々軍用IFFは搭載されておらず、SIFだけが搭載されています。

 スティンガーなどの携帯式地対空ミサイルはその最たる例で、下の写真にあるスリットが刻まれた板状のものがSIFのアンテナです。

スティンガーを構える駐韓アメリカ空軍・群山空軍基地の空軍警備隊員(資料写真、Tony Lambert, Public domain, via Wikimedia Commons)