揚げ物好きのわたしが糖尿病になっていないのが不思議だが、とりあえず「糖尿病を積極的に治療しない」はわたしには関係がない。しかし糖尿病で悩んでいる人のために、一応ふれておこう。

 和田氏が長年勤務していた高齢者専用の浴風会病院では、「糖尿病ではない人が、糖尿病患者の3倍の確率でアルツハイマー型認知症になって」いたという事実から、「高齢者の糖尿病は積極的に治療しない」方針をとっていたという。

「日本糖尿病学会では、空腹時血糖値が126mg/dL超、食後2時間の血糖値が200mg/dL超の人を糖尿病と定義しています」

 しかしこの数値は「厳しすぎる」と和田氏はいう。「実は私もこの数値をオーバーした糖尿病患者です。それでも積極的な治療は行っていません」

 その代わり、自分で緩やかな目標値を決めて、朝食前の血糖値を300mg/dLを切るようにしている。そのためには毎日30分ほどの早歩きや、スクワットを20回ほどしている。それでも300mg/dLを超えるときだけ、薬を飲む。

 和田氏の考えに一定の説得力があるのは、氏自身が高血圧であり、糖尿病患者であることである。つまり本人が当事者なのだ。

 しかしそれ以上に説得力不足なのは、われわれ自身が所詮素人だから、医者である和田氏のような自信がもてないことである。

糖尿病の怖さがある限り

 糖尿病に関しては、元近鉄バファローズの佐野慈紀氏が糖尿病の合併症で、2024年5月に右腕を切断したと報じられている。

 かれは、グローブを振りかぶったとき、両肘で帽子をわざと落とし、自分の禿げ頭を見せるというギャグで笑いをとっていたので、知っている人も多いと思われる。

 かれのブログ「佐野慈紀のピッカリブログ」では、前向きの明るい姿が見られてホッとするが、失明や脚の切断など糖尿病の合併症の怖さがあるかぎり、そう軽々に治療を止めるわけにもいかないだろう。

 わたしは闇雲に医療や専門家を信用しているわけではない。

 会社に勤めていたとき、後半の15年ほどは健康診断を受けなかった。最初は遅刻してさぼったのが始まりだが、翌年からは「健診は意味ないな」と思い、受診するのをやめた。なにしろ、全国的に健診を実施している国は、日本だけというではないか。

 近藤誠氏の「がんもどき説」も信用した。もしがんになっても、入院治療はせず、いままでどおりの生活をつづけ、痛みがひどくなったときだけ、鎮痛剤を打ってもらう、ということに決めた(そのためには理解ある医者が必要だ)。

 しかし最近この考えがぐらついている。がんの生存率が延び、なかには病気が寛解する率も飛躍的に高くなっているようだからである。

 和田秀樹氏のような提言は、実行するか否かは別として、知っておくだけでも参考になる。医療の常識や通念を盲目的に信用しないためにも、である。