8月の日本株暴落を横目に、高値で推移しているのが暗号資産の代表的通貨であるビットコインだ。足元では、5月の高値1BTC=1100万円超よりは低下して800万円台で推移しているが、それでも年初比30%超の上昇だ。暗号資産は値動きが激しく、過去には取引所の破綻に伴う資産の凍結もあった。「ハイリスク・ハイリターン」のイメージもつきまとう暗号資産だが、入門者への間口を広げようという動きが企業の間で活発化している。
(種市房子:ライター)
マウントゴックスの弁済で「億り人」続々?
2014年に経営破綻した暗号資産交換業者のマウントゴックスの弁済が10年を経て今年7月に本格化した。この結果、「億り人」が相次いで登場しているもようだ。
同社の経営破綻の引き金となったのが、ハッキングによるビットコインの不正流出だった。不正流出後、同社はサイトへのアクセスを停止し、利用者は出金ができなくなった。同社側は経営破綻後に民事再生手続きを開始し、利用者の暗号資産残高を精査してきたが、2024年7月から本格弁済を始めた。破綻当時、1万円前後に過ぎなかった1BTCの相場は10年を経て、弁済開始時には900万円を突破した。
関係者によると、弁済時期や額によって現金とビットコインを選択できる方式だったという。保有額が少なかった債権者には早くに現金で弁済され、大量の現物を保有していた債権者が現物での弁済を希望すれば、時間がかかる傾向にあるという。
<暗号資産交換業者への口座開設は1000万件を突破>
ある税理士の元には、10年前に数百万円分だったビットコインの返済を受け、数十億円の確定利益が出た会社員が相談に来たという。この税理士は「ある日、突然多額の利益を得た投資家は精神的に不安定になることが多い。税務処理に気を遣うのは当然だが、メンタル面でのケアも必要」と話す。
ただ、これは暗号資産投資が現在ほど普及しておらず、法規制もほとんどなかった時期に参入した一部の投資家の極端な例だ。事件を受けて、資本金などで一定要件を備えた暗号資産交換業者を登録制とするなど、法規制も進んだ。さらに、現在は、政府が「資産運用立国」を掲げ、個人レベルで資産運用への意識が高まっている。日本暗号資産取引業協会によると、暗号資産交換業者に開設された口座は2024年5月時点で前年同期比44%増の1037万件に達した。この機会を巧みにとらえたのが、メルカリだ。