ETFならば税率20%に?

 ETFは、現物の暗号資産売買に比べて、個人投資家には導入や運用のハードルが低い。暗号資産そのものの取引の場合、暗号資産交換業者での売買という形を取り、専用の口座開設が必要だ。

 これに対してETFならば、既に持っている証券口座での取引が想定される。ETFは、金融当局が監督している証券会社を通じて販売されるため、一定の投資家保護も想定される。

 現在、日本では暗号資産の譲渡益は、雑所得として、給与所得や事業所得などと合算されて、5~45%の所得税がかかる。加えて、住民税と復興特別所得税約10%もかかる。これに対して、ETFならば、株や投信の配当や譲渡益同様に分離課税で、所得税と住民税、復興特別所得税約20%で済むようになるのではと想定される。個人投資家から、現物暗号資産のETF待望論が出るゆえんだ。

 暗号資産そのものの売買についての税制を見直す声も根強い。

 日本暗号資産ビジネス協会と日本暗号資産取引業協会は2024年7月、「外国において発行された暗号資産ETFが今後国内において流通したり、国内でも暗号資産を原資産としたETFが組成された場合に、これらの取引から生じた所得が分離課税の対象とされるのであれば、暗号資産の現物取引も分離課税とされない限り税制上の著しい不均衡が生じる」として、現物取引を約20%の申告分離課税とするよう、政府に要望を出した。

 暗号資産への注目が高まるにつれて、ETFの解禁や税制改正などを求める投資家や証券会社、暗号資産取引業社の声は高まりそうだ。だが、日本の投資環境は、新NISAでようやく資産運用が一般化し始めた段階。慎重な金融庁とのせめぎあいが続きそうだ。

(注)本記事は個別の金融商品や投資対象を推奨するものでもありません。投資の最終決定は各自の責任でお願いいたします。