希望、そして落胆

 次に状況が動いたのは2002年9月。時の総理大臣・小泉純一郎が北朝鮮を訪問し金正日と初の日朝首脳会談を行ったのだ。

 この時、金正日は北朝鮮による日本人拉致を公式に認め謝罪、5人の被害者を日本に一時帰国させると約束した。しかし、当時の政府認定拉致被害者が17人なのに対し、北朝鮮が認めたのは13人だけ、しかも帰国する5人以外の8人はすでに死亡しているという信じ難い回答も伴っていた。

 横田めぐみさんは現地で結婚し子供もいるが心を病んで自殺した、と北朝鮮は説明した。それを聞いた時の滋さんの腹のそこから絞り出すような慟哭は忘れられない。後ろには気丈に堪える早紀江さんの姿があった。

北朝鮮当局から「めぐみさんはすでに死亡」と知らされ悲しみに暮れる横田さん夫妻(写真:橋本 昇)
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 大人になっためぐみさんとめぐみさんの娘で横田さんの孫に当たるキム・ヘギョンちゃんの写真を持って男泣きする滋さんの姿は、今思い出しても涙が出てくる。

北朝鮮で成長した横田めぐみさん(右)と娘のキム・ヘギョンさん(横田家提供)
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