妻の民泊ビジネスは絶好調、「俺の仕事って何なんだ?」

 男性の妻は同じ県内のスキーリゾートとして人気のエリア出身で、両親から相続した古民家を活用し義妹と民泊を営んでいる。

 コロナ明けの物価やエネルギー価格の高騰で近隣のリゾートホテルや温泉旅館がこぞって値上げに踏み切ったこともあり、昨年12月と1月はインバウンド客などの利用で稼働率が9割を超え、売り上げは男性の冬のボーナスをゆうに上回った。

「納税が大変」とうれしい悲鳴を上げる妻の横で、「俺の仕事って何なんだ?」と虚しい気持ちになったと話す。

 男性は妻の実家があるエリアで観光業を営む同年代のグループと交流があり、何度か「一緒に仕事をしませんか?」と誘われている。右肩上がりのインバウンド客を対象に新しいビジネスやサービスの立ち上げを急ぐ姿は「キラキラして見える」という。

 教員経験しかない自分が観光の世界で活躍する姿は想像できない。しかし、「子供もいないし、小さな塾でもやりながら妻の民泊を手伝っていけば何とか暮らしていける」と考えている。

 これまでの選挙では常に「教育改革」を公約に掲げる候補者に投票してきた。しかし、学習内容の拡充や子供の教育格差を解消する政策は実施されても、教員の待遇問題はずっと放置されてきた。

「中学の3年間は人間が肉体的にも精神的にも飛躍的に成長する時期。そのダイナミズムを身近で見守ることができる教員の仕事はとても魅力的だと思う。しかし、今はその“役得”を楽しむ余裕すらない」

 冒頭の文科省の改革案を見た男性は、「何を今さら」と吐き捨てた。男性が在籍する学校では、定年退職者を除いても毎年数人が職場を去っているという。今回の改革で、果たしてどれほどの“退職予備軍”を引き止められるのだろうか。