都内では最古の木造駅舎として親しまれていた原宿駅都内では最古の木造駅舎として親しまれていた原宿駅(2020年3月、筆者撮影)

 鉄道の駅舎が歴史遺産と認識される風潮は以前からあったが、最近は各地で駅舎を“復原”する動きが相次いでいる。1924年に完成した木造の原宿駅舎は、2020年に役目を終えて新駅舎へとバトンタッチしたが、歴史的にも価値のある駅舎だったことから、渋谷区や地元商店街などから保存を望む声が上がり、JR東日本も解体後に「場所を移し、元の部材をできる限り使って再現する」と発表していた。そして今年5月末から工事が始まった。それら駅舎の復原についてフリーライターの小川裕夫氏が解説する。

混雑緩和を図る改修で役目を終えた原宿の「木造駅舎」

 JR東日本が、竹下通りに面する原宿駅の木造駅舎を建て替えると発表したのは2016年6月。原宿駅は明治神宮内苑の最寄り駅でもあり、特に大みそかから元日にかけて多くの参拝客で大混雑する。

 それまでの原宿駅は1面2線構造で、山手線の内回り電車と外回り電車の乗降客が同じホームを共用していた。そのため、混雑が激しくなる正月は明治神宮側に設置されていた臨時ホームを開放して対応。ホームを2面にすることで動線を分散し、混雑緩和を図ろうとした。

 原宿駅の木造駅舎を建て替える計画には、駅構内の動線を整備する目的も含まれていた。右肩上がりで増える訪日外国人観光客や五輪観戦に訪れる来街者が増加することを想定した動きだった。コロナ禍により訪日外国人観光客や来街者の数は減ったが、現在は、コロナ前の水準に戻っている。現在、2面化された原宿駅ホームは混雑緩和に一定の効果を発揮している。

新駅舎と旧駅舎が並んだ原宿駅新駅舎と旧駅舎が並んだ原宿駅(2020年4月、筆者撮影)

 他方、改修によって木造駅舎は役目を終えた。1924年に竣工した原宿駅の木造駅舎は、「半木骨造」とも呼ばれるイギリス風ハーフティンバー様式。尖塔つきの屋根に白い外壁という特徴を持ち、都内で現存する最古の木造駅舎だった。それだけに歴史的・建築的な価値は高く、解体を惜しむ声は地元住民や商店街の人たちからも上がっていた。

 JR東日本は、「外観を再現して建て直す」ことを当時から発表し、駅舎の解体後も資材を保管していた。しかし、あくまでも木造駅舎の今後については「再現」という言葉にとどめている。