ポリグラフの使用が圧倒的に多い大阪府警

──取り調べでは、ポリグラフ(うそ発見器)も使われ、「ポリグラフによって一つでも二つでも材料が得られれば、取調官は心理的に有利になり、自信を持って追及できる」と書かれています。

甲斐:全国の科捜研で、年間4000から6000件ほど、ポリグラフが使われています。ポリグラフを使う時には「やったのかどうか」という聞き方はしません。事件の細部に関して記憶があるかどうかを、容疑者の脈拍や発汗などの生理現象の変化を、相手に取り付けた装置で測るのです。

 推定質問法という検査方法があります。たとえば、凶器を捨てた場所を警察側は把握していて、それについて容疑者に質問するのです。4カ所ほど異なる場所を提示し、その中の一つに正解と思われる場所を入れておく。警察が把握している「ここだ」という場所で反応が出たら、「間違いなく犯人だ」という確証を得ることができます。

 凶器を捨てた場所を警察が十分に推定できていなくても、可能性のあるエリアなどを質問に入れて聞くこともあります。質問はだいたい4つで構成されます。反応が出たら、次に、さらに範囲を狭めて質問をする。どんどん範囲を狭めていくと、だんだんポイントが限定されて、実際にそこに行くと凶器が見つかります。

 供述を得なくても、ポリグラフで犯行を偶然に立証することができたこともあります。核心を突く質問をされて、容疑者が観念したケースです。ポリグラフをしている最中に、容疑者が自白を始めたのです。その時は、ポリグラフの検査官は取調官ではないので、いったん止めて、取調官に引き継いでから自供を聞いたそうです。

 捜査官の多くは、容疑者を任意同行で署に連れて行き、そこでポリグラフ検査を行って確証を得て、それから自信を持って取り調べに入る。大阪府警はポリグラフの使用量が全国で見ても圧倒的に多く、年間で2000回ほど使います。有名なポリグラフの検査官も大阪にはいます。

──ポリグラフの結果だけで、容疑者がやったと断定はできないのですか?

甲斐:裁判に証拠として提出された例はあると聞きましたが、それだけを証拠として有罪となった例はないと思います。

──神戸連続児童殺傷事件では、当時中学校3年生だった犯人に、捜査一課の巡査部長が職務質問をしたことが、大きく捜査を進める契機になったと書かれています。